前向きに読み解く経済の裏側

2016年8月22日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

小泉構造改革を支持していた供給側強化論の誤解

 小泉構造改革を巡っては、賛否両論ありました。その根底には、経済が不振である理由を需要側の不足に求めるか供給側の非効率に求めるか、という論争があったのです。供給側に問題があるなら、デフレではなくインフレになるはずなのに、当時はデフレだったのですから、それだけでも、供給側の問題が主因でないことは明らかだったのですが、そうは考えない人も多かったのです。

 供給論者は、日本経済のTFP(詳しい説明は省きますが、ここでは生産性のことだと考えて下さい)が伸びていないことを問題としていました。そして、TFPが伸びていないのは、非効率な企業が淘汰されていないからだ。非効率な企業を淘汰すれば、労働力が効率的な企業に移るはずだから、TFPは上がるはずだ、と考えたのです。

 しかし、それは二つの意味で間違いでした。一つは、効率的な企業に採用意欲が無いことを考慮しなかったことです。非効率な企業さえ淘汰して労働力を放出すれば、自然と効率的な企業に雇われるだろうと考えていたのです。

 余談ですが、リフレ派が「日銀が金融緩和をすれば、資金は世の中に出回るはずだ」と考えていたのと似ています。相手の立場を考えないで、「供給してやれば需要されるだろう」という上から目線で経済を見る人が理論家には多いので、注意が必用ですね。

 今一つは、日本企業の省力化投資が少ないために効率化が進んでいなかったことについて、過去のデータの延長線上で将来を論じてしまったのです。日本経済は効率化のスピードが遅いので、このまま需要を増やしても供給力が追い付かずにインフレになるだけだ、と考えてしまったのです。

 需要さえ増えれば省力化投資が進むはずなのですが、そこを無視して需要を落ち込ませる政策(非効率企業が淘汰されて失業が増えれば個人消費が減る)を採ってしまったのです。

 今後は、労働力不足の時代になりますから、こうした誤解が実害を産むことは無くなっていくと期待していますが。

  
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