温暖化問題はどうするのか
メイ新首相が就任し、まず行ったことはエネルギー・気候変動省を廃止し、ビジネス・イノベーション・技能省と統合し、新たにビジネス・エネルギー・産業戦略省を設立したことだった。気候変動の名前をつけた省が廃止になったことから、環境団体からは温暖化対策に熱心だった英国の取り組みが後退する懸念も出ている。外相に就任したボリス・ジョンソンなどEU離脱派幹部は温暖化懐疑派が占めていたため新内閣には温暖化問題に熱心でない閣僚がいることも、環境派が懸念する点だ。
英国政府が原発建設に熱心な理由の一つは、温暖化対策として二酸化炭素を排出しない低炭素電源を活用するためだ。また、英国民の原発新設に関する理解も高いが、温暖化対策に必要というのも理由の一つだ。英国での原子力発電への支持に関する世論調査をみると、2013年に支持が落ち込んでいる。これは温暖化懐疑論が当時もてはやされたためと説明されている。温暖化問題への熱意が下がると原発建設への熱意も薄くなることがあるかもしれない。
それでもヒンクリーポイントCは必要
英国政府の結論は早ければ9月にも出されるとみられている。スパイ問題、電気料金から建設を諦めるのではとの見方もあるが、その場合の問題は電力供給量だ。1990年に電力市場を自由化した英国では、発電所の老朽化による閉鎖が行われても発電所の新設が行われなくなった。将来の電気料金が不透明ななかで巨額の投資を行う事業者は限られているからだ。
英国政府は発電所建設のための制度としてヒンクレーポイントCに使用された差額保証制度(固定価格買い取り制度)、あるいは発電所を建設すれば一定額が支払われる容量市場を作っているが、まだ確実な制度はなく、英国では図-3の通り発電設備が減少している。
ヒンクリーポイントCからの電気は英国の全需要量の7%を賄うことができる。もし、プロジェクトを中止すれば、新たな設備を政府は手当しなければならない。それも二酸化炭素をあまり排出しない競争力のある電源だ。そんなマジックがあるだろうか。英政府の決断が注目される。
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