本記事は4月13日公開時点において、新聞社の世論調査では回答者に高齢者が多くなる偏りが発生しているのではないかという指摘を行っておりましたが、不正確であることが判明しましたので、お詫びの上訂正いたします。詳細については記事末尾をご覧ください。(2016年4月15日、編集部)
世の中の様々な出来事については、年齢により意見がかなり異なることがある。年齢により回答が異なる質問の代表例が原子力発電に関連するものだ。私の研究室で、昨年11月から12月にかけ静岡県御前崎市の中部電力・浜岡原子力発電所の近隣4市(御前崎市、掛川市、菊川市、牧之原市)にお住まいの人を対象に世論調査を実施した。質問票を4市の約4万軒に発送し約7600通の回答を得たが、回答を戴いた人の53.1%が60歳以上だった。
日本の人口構成では60歳以上は32.6%なので、回答者は高齢者に偏っている。一方、原発の再稼働に関する質問への回答では、再稼働に反対する比率は年齢と共に高くなる傾向がある。私たちの調査でも、20代では、再稼働賛成が16.4%、代替がないなら再稼働やむなしが50.0%、再稼働反対が27.9%だが、再稼働反対の比率は年齢とともに上昇する。60代が最も反対の比率が多くなり、再稼働賛成が10.7%、やむなしが30.3%、反対が55.3%となる。
今回のアンケートの結果では、再稼働反対が50.3%だったが、年代別の回答を日本の年齢構成を反映し再計算すると図-1の通りとなり、再稼働賛成と再稼働やむなしが50%を超え、再稼働反対は44.6%となった。質問に答えた人の年齢が偏っていたために、回答を単純に合計すると全住民の構成を代表した意見にはならないことになる。
年齢の上昇と伴に再稼働反対が増える傾向は、今回の調査対象だったエリアだけでなく、全国ベースの世論調査でも同じとマスコミ関係者から聞いた。
姑息な朝日新聞の世論調査
2月16日付の朝日新聞で発表された内閣支持率などに関する世論調査では、原子力の再稼働に係わる調査も行われていた。結果は、再稼働賛成が31%、反対が54%だった。
4月8日付け朝日新聞は、18歳、19歳を対象に実施した世論調査の結果を発表している。夏の参議院選から選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられることを反映し、調査を行ったものだ。原子力の再稼働に関する質問があれば、2月16日付け紙面の結果と比較ができるので面白いと思ったが、なんと原子力発電に関する質問を変えていた。質問は、「原子力発電を今後どうしたらよいと思いますか」になり、再稼働に関する意見を訊いていない。
回答をみると、ただちにゼロにするが10%、近い将来ゼロにするが48%、ゼロにはしないが37%だ。選択肢も3つしか用意されていないし、近い将来というのも曖昧な問だ。原子力発電設備に関するアンケートでは、次の4つの設問を設けると分析が簡単だ。①新設まで認める②既存設備の置き換えに限り認める③既存設備の運転が終わっても置き換えは認めない④ただちに廃止。
しかし、質問内容を変えたにせよ、ただちにゼロにするが10%しかなく、近い将来ゼロにするという意見は再稼働を前提にしていると考えると85%は再稼働賛成あるいはやむなしと考えていると理解できる回答になっている。やはり若年層では再稼働肯定の比率が高いということだ。