2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2016年4月13日

原子力のメリットとデメリット評価の必要性

 前出のアンケート調査では、地元の反原発団体と一部の新聞社から、アンケートの質問が賛成への誘導であると非難された。アンケート調査では英国、米国の事例を基に、エネルギー政策、エネルギー価格、気候変動問題に関心を持つ人と持たない人で原子力発電に対する賛否がどの程度異なるか調査するため、エネルギー自給率、日本の温室効果ガス排出目標、電気料金の推移などを知っているかとの質問を行ったが、それらの質問が賛成への誘導との非難だ。

 事実関係を説明することが賛成への誘導というのであれば、アンケート調査は行えないことになる。事実関係を説明され原子力発電が持つメリットを多くの人が認知するのは困るということだろうか。新聞社からの質問には、「反対派の意見がアンケートには書かれていない」というのもあったが、賛成派の意見も書かれていない。書かれているのは事実関係だけだ。

 原子力の問題になれば、なぜ感情的な反対論が出てくるだろうか。賛成でも反対でも、原子力発電が持つメリットとデメリットを冷静に評価し、その上で議論を行うべきだ。どちらかの評価を聞きたくないと言えばきちんとした議論はできない。世論調査でも可能な限り国民の意見の代表となるような結果を示すべきだ。偏った結果を示し、いかにも自紙の主張が世論に支持されているかのように振る舞うのはみっともない。

【編集履歴】(2016年4月15日)
●「朝日RDD」方式による世論調査手法(http://www.asahi.com/special/08003/rdd.html)によると、年齢の偏りが起こらないように行われていることが分かりました。「回答者として高齢者が多くなる」という記述について、訂正してお詫び申し上げます。また、タイトルを「新聞社の世論調査の不思議さ 原子力の再稼働肯定は既に多数派」と変更いたしました。

●以下、削除しました。
・原文1ページ1行目〜19行目
世論調査には罠がある。2月16日付け朝日新聞で発表された世論調査に関する記事を基にどんな罠があるか考えてみたい。記事によると調査方法の概 要は次だ。「無作為に電話をかける方式で全国の有権者を対象に調査した。世帯用と判明した番号は3909件。有効回答は1943人。回答率は50%」。お分かりだと思うが、調査対象になっているのは固定電話のようだ。また、回答率も50%しかない。固定電話があり、回答する時間がある人といえ ば、高齢者が多くなると考えられる。年齢により意見に大きな差がない質問であれば問題はないが、年齢により意見が異なる質問では国民全体の世論を反映しな い偏った回答が寄せられることになる。4月4日付け読売新聞によると、携帯しかない世帯が全体の14%に達することが分かったので、同紙は電話で世論調査を実施する際には4月から固定 電話に加え携帯電話も対象にしたとしている。しかし、調査に回答する年齢となると、やはり年配者が多くなるのではないだろうか。人口構成を反映した調査に なるように実施しなければ世論調査の信頼度は下がることになる。年齢により回答が異なる質問の代表例が原子力発電に関連するものだ。私の研究室で、昨年11月から12月にかけ静岡県御前崎市の中部電力・浜岡原 子力発電所の近隣4市(御前崎市、掛川市、菊川市、牧之原市)にお住まいの人を対象に世論調査を実施した。質問票を4市の約4万軒に発送し約7600通の 回答を得たが、回答を戴いた人の53.1%が60歳以上だった。
・原文2ページ7行目〜9行目
朝日新聞社の原子力発電に関する世論調査では高齢者の意見の反映が色濃くなり、反対が増えている可能性が高い。
・原文2ページ12行目〜13行目
この数字は、世論調査の方法と回答率を考えると、国民全体の意見より反対が増えている可能性が高い。

  
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