原子力発電への賛否はなぜ変わるのか
年齢により原子力肯定の比率が異なるように、国により時代により原子力発電に関する賛否は異なる。異なる理由は、国の文化的な背景、経済情勢、エネルギー安全保障、環境問題に関する国民の関心の度合いなどによるものだ。
別の言い方をすれば、エネルギー政策の目的は、環境性能と価格競争力に優れたエネルギー・電気を安全かつ安定的に国民に届けることにあるが、原子力発電がこの目的達成に寄与するメリットと過酷事故の可能性、高濃度放射性廃棄物処理というデメリットを比較しどちらが大きいと感じるかにより賛否が分かれると言える。
原発事故が起これば、デメリットを感じる人が多くなり、原子力発電への賛成は減少すると思われる。2011年の福島第一原発の事故後と2005年に行われた調査を図-2が比較しているが、日本、ドイツ、フランスでは「直ちに閉鎖」との意見が増えているものの、米国と英国では事故にもかかわらず、「直ちに閉鎖」の意見が減少している。
この理由は、英米両国では原子力発電の事故のデメリットよりもメリットが大きいと感じる人が相対的に多かったためだ。英国では、エネルギー安全保障と気候変動問題に関心を持つ人が多くいる。2012年から13年にかけ英国では温暖化懐疑論が広まり、図-3の通り、温暖化を懸念する人の比率が減少する。その結果、原子力発電への支持(新設と建て替えを容認)は47%から45%に低下し、閉鎖すべきが9%から13%に増加した。
米国では、原子力発電のメリットは競争力のある電力コストとエネルギー自給率向上にあると考えている人が多い。シェール革命により、米国の天然ガスの生産量はロシアを抜き世界一になり、今年2月には液化天然ガスとしてシェールガスが初めて輸出された。シェールオイルにより原油もサウジアラビアを抜き世界一の生産量になった。ガソリン価格も原油価格の下落を受け安くなった。