サイバー空間の権力論

2016年10月14日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 次に、10月13日に発売が開始された「プレイステーションVR(PSVR)」だ(価格は44800円だが、その他専用のセンサーとプレイステーション4が必要になる)。9月に行われた「東京ゲームショウ2016」でも大きな注目を浴びたPSVRは、「バイオハザード」など人気タイトルのPSVR版が出展された。その他のVRゲームを含めて110タイトルものVRゲームが出展されたことも話題を呼んでいるが、オキュラスリフトやPSVRを中心に、大きなVR産業が形成されつつある。

VRジャーナリズム
ダンボールとスマホでつくるVRゴーグル

 VRの可能性はゲームや映画といったエンタメ産業に限定されない。コンピュータで構築されたポリゴン映像のVRの一方で、現実の映像を特殊なカメラで360度すべてを記録することで、現実空間を再現することもVR技術が可能にする。ニューヨーク・タイムズ(以下NYT)やウォールストリートジャーナルといった報道メディアは、VRを利用した「VRジャーナリズム」を展開している。2015年11月からNYTはスマホ向けアプリ「NYT VR」を発表。NYTはグーグルと提携して100万以上の購読者にグーグル製のダンボールでできたスマホ用ビューアーを無償で提供した。この簡易的なビューアーはユーザーの目の位置にスマホを装着する仕様になっており、手軽にVRが楽しめる(これらは15ドル程度の安価な値段で、またグーグル以外からも購入できる)。

 NYTVRでは、シリア、南スーダン、ウクライナの難民である3人の子供の日常が映像として公開されている(リンク先の映像はパソコンで視聴可能な360度対応の動画だが、アプリとゴーグルを利用したVR版ではよりその場の臨場感を感じられるものとなっている)。スマホ越しに映像をみるユーザーには、その場所に自分がいるような体験が可能になる。イヤホン越しに人々の会話や風の音がきこえ、ユーザーが首を動かせば360度すべての光景を見ることができる。ユーザーはこうして実際の現場にいるかのような体験を通して、文字では伝えきれない感覚をVRを通して補完する。こうした動きの中、NHKも2016年2月から「NHK VR NEWS」を開設しており、映像をVRで配信している。

視聴から体感、体験へ
エンタメから福祉、アダルト産業まで

 VRは他にも様々な活用が期待されている。グーグル・マップのような地図アプリと連動することで、ゴーグルをかけて行ったことのない街をユーザーが歩いているかのような体験も可能になるだろう。さらに数年単位で映像を保存しておけば、自分の生まれた街の映像が、時間を経ても変わらず保存されることになる。すでに取り壊された建物にもVRを通して入ることができるということだ。昔住んでいた街をVRを通して歩けることは、高齢や病気のため家から出歩くことが困難になった人にとってどれほど心の癒やしになるだろう。このように、VRは福祉分野からも期待されている。

 エンタメ産業もさらにVRを活用できる。野球やサッカーなどの会場にカメラを設置する。するとユーザーは家にいながらゴーグルをかけることで、まるでスポーツ会場にいるかのような体験を楽しめる。選手の活躍はもちろんのこと、隣の人の興奮や会場に響き渡る声援がきこえてくるのだ。アーティストのコンサート会場にカメラを設置すれば、生の迫力ある歌声がきこえてくる。

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