2024年11月24日(日)

万葉から吹く風

2010年3月12日

 先の長歌でいささか詠み手の勢いにびびっていた読者も、この反歌があることで詠み手に気持ちが寄り添う。詠み手もまたこの反歌を詠むことで、煮えたぎった思いが多少でも冷める自分を感じたことだろう。

 書くことはセルフカウンセリングだと私は思っているが、この二つの歌には、激しい嫉妬で傷ついた自分を、自分で癒す、その過程が浮き彫りになっていると思う。

 人を愛するのも憎むのも我が心。自分を傷つけるのも自分なら、癒すのもまた自分にほかならないのである。
                                                    

◆「ひととき」2010年3月号より


 

 


 

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