有権者の声
クリントン陣営の標的となっているオハイオ州クリーブランド郊外にあるシェーカーハイツ在住のダリル・ウッド(47)さん宅を筆者が訪問すると、日本車のボンネットを開けてエンジンのチェックをしていました。
「ダリルさんですね。クリントン陣営のモトオ・ウンノと申します。あなたの票に頼ってもいいですか」
筆者がアフリカ系のダリルさんに尋ねると、彼は一言こう語ったのです。
「ノー」
「トランプの支持者なんですか」
トランプ支持者か確認をすると、ダリルさんはこう語ったのです。
「そうです。トランプ支持者です」
「あなたの意見を尊重しますから、トランプ支持の理由を聞かせてくれませんか」
筆者が真顔で頼むと、ダリルさんは笑みを浮かべながらこう言ったのです。
「クリントン支持者です。トランプ支持者と言ったらあなたがどのような反応をするのか見たかっただけです」
ダリルさんはそう答えると、10月17日午前に期日前投票に行くと約束しコミットメントカードに著名をしてくれました。オハイオ州では期日前投票は10月12日に始まり、投開票日前日の11月7日まで投票を行うことができます。
投票が始まっても、まだ決めかねている有権者もいます。クリントン陣営の標的となっているオハイオ州クリーブランドシェーカーハイツ在住の白人男性(66)の家を訪問しました。この有権者は、次のように語っていました。
「私は2回(2008・12年)オバマに投票しました。今回はサンダース(上院議員)を支持しています。彼は反ウォール街です」
この有権者は、クリントン候補はウォール街と癒着していると言いたいのです。バーニー・サンダース上院議員(無所属・バーンモント州)の支持者は、「クリントン=ウォール街」という固定化したイメージを持っています。彼は、続けて次のように語りました。
「私はNAFTA(北米自由貿易協定)とTPP(環太平洋経済連携協定)に反対です。緑の党に投票しようと思っていますが決めかねています」
筆者がこの有権者に「緑の党に投票することはトランプを利することになります」と語ると一瞬戸惑いの表情を見せたのですが、妻と思われる中高年の白人女性がこの男性を呼びに来たために結局会話はこれで終わってしまいました。
クリーブランドで2日間戸別訪問を行い、6枚の期日前投票用のコミットメントカードに署名をもらいました。署名を拒否した有権者は1名のみでした。クリントン陣営ではボランティアの運動員及びインターンシップの学生が、署名入りの期日前投票用のコミットメントカードの回収に時間とエネルギーを注いでいます。その理由について以下で説明しましょう。