海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年10月26日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

投票率向上が鍵

 クリントン候補は、支持率及び選挙人の数の双方においてトランプ候補に対してリードを保っていますが、同陣営には懸念材料があります。投票率の低下です。ちなみに、2008年大統領選挙の投票率は58.3%、12年は54.9%でした。

 トランプ支持者は熱狂的で投票に出向く可能性が高いのですが、クリントン支持者はあまり熱意がないために投票に行く見通しが立ちにくいのです。しかも、トランプ候補との支持率が開くと、クリントン陣営には支持者が選挙に出向かないのではないかという不安が強くなってくるわけです。

 2012年米大統領選挙では、3回のテレビ討論会が終了した段階でオバマ大統領は共和党のミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事を支持率で上回っていました。その頃、選対本部から筆者がボランティアの運動員として活動をしていた南部バージニア州フェアファックス市にある選対に「世論調査を信じるな」という指示が出たのです。

 クリントン候補の支持者にはアフリカ系及びヒスパニック系の低所得者層がいます。オハイオ州では11月8日の投票日に投票を行う場合、投票所で運転免許証などの写真入りの身分証明書の提示が義務付けられています。中西部ウィスコンシン州のように共和党の州知事の中には、投票において不正投票を防ぐために写真入りの身分証明書を求めるようにした知事がいます。民主党はその背景には同党を支持する低所得者層に投票をさせないという意図があると非難しています。低所得者層の有権者は運転免許証がないために、投票ができないからです。テキサス州では60万人以上の有権者が身分証明を保持していません。その大半はアフリカ系及びヒスパニック系です。

 その対策としてクリントン陣営では、低所得者層のアフリカ系やヒスパニック系に期日前投票を促しています。というのは、郵送による期日前投票では写真入りの身分証明書が必要ないからです。

パンフレット

 さらに、戸別訪問の際、クリントン陣営では主としてアフリカ系を対象に「オバマのレガシー(政治的功績)を守れ」と表紙に印刷されたパンフレットを配布しています。裏面には、「あなたが私にしてくれたようにヒラリー・クリントンにも同じことをやってください」というオバマ大統領のメッセージが書かれています。オバマ大統領に対するアフリカ系の支持率は90%以上です。

 オバマ大統領のレガシーにはリーマンショックからの経済回復、医療保険制度改革(通称オバマケア)並びにキューバとの国交正常化などがあります。それらに加えて、オバマ大統領は、両親に連れられて入国した不法移民の子供を対象に、一定の条件を満たせば、国外追放を緩和するという大統領令を発表しています。トランプ大統領が誕生すると、オバマケアは廃止され、大統領令は覆されるリスクが高くなります。激戦州オハイオ州では、クリントン陣営はオバマ大統領のレガシーを残すようにアフリカ系に呼びかけながら、期日前投票を促しています。

   
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