2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年10月31日

 小泉氏が委員長を務める「農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム」(骨太PT)が、この議論を始めて9カ月が経過した。

 当初、小泉氏は、この問題をまとめ上げて、農林部会長として実績を残す心づもりだった。その小泉氏に手柄を取らせまいと全農は抵抗した。価格引き下げの要請には事実上の「ゼロ回答」を繰り返しただけでなく挑発もした。小泉氏に手柄を取らせると、その勢いで「株式会社化」阻止のラインが割られてしまうことを恐れたのだ。

 ところが、小泉氏は8月25日、内外情勢調査会(時事通信社)主催の講演会で次のような発言をした。自ら強く希望した農林部会長の再任希望が総務会の承認で叶った翌日のことだ。

 「株式会社化したほうが日本の農業にプラスであれば、その選択肢は排除されない」(8月25日、産経新聞)

 同日付け毎日新聞にも同じ表現を使った記述がある。

 全農「株式会社化」は、官邸と農水省の間で早くから「必定路線」であった。昨年4月、農協組織で政府との折衝窓口となる全国農業協同組合中央会(全中)の萬歳章会長(当時)が任期途中に突然の辞任に追い込まれる出来事があった。全中として「株式会社化」の受け入れを政府と約束してしまい、それが全農の逆鱗に触れたのだ。農林部会長の小泉氏がその事情を知らないはずはない。そういう事実を考慮せずに「選択肢」という表現を使って、生産資材価格問題で全農の譲歩を引き出そうとしたことは、基本的なミスと言わざるを得ない。

 「株式会社化」は、生産資材価格問題が決着する11月中旬以降に天王山を迎える。それを前提に農水省は次期通常国会に、「農業競争力強化法」(仮称)を提出予定だ。2014年1月施行の「産業競争力強化法」の農業版とイメージしてよい。TPP協定を批准して、日本農業のグローバル競争に備え、過当競争や過剰供給に陥っている産業や事業の再編を、税制や補助金などの優遇措置によって促すことが目的だ。

 農業界は、農家の数も多ければ、肥料や農薬などの業界だけでなく、米卸など流通側も過剰で、多段階となっており、それらはすべて農家の負担となるのだ。肥料を例にとると、国内のメーカー数は農水省生産局技術普及課でも、正確な数字がつかめていないぐらいだ。新法を使って農水省は業界の再編を促し、その中からグローバルに活躍できるアグリビジネスの地盤作りを目指す意向だ。


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