海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

直前のコミュニケーションか出来事か

 次に、クリントン陣営がとっているオクトーバーサプライズに対するもう一つの対策について述べてみます。

インターンシップの学生と筆者(@オハイオ州クリーブランド)

 ボランティアの運動員とインターンの学生は戸別訪問を終了すると、選対に戻り結果報告を行います。その際、標的となっている家を何軒訪問したのかではなく、「何人の標的となっている有権者とコミュニケーションをとったのか」「何枚署名入りの期日前投票用のコミットメントカードを獲得できたのか」「ボランティアの運動員を何人勧誘できたのか」「何人の標的となっている有権者が郵送による投票を行うのか」「名簿にリストされている標的となっている有権者をすべて訪問したのか」の5つを点数記録用紙に記入します。点数記録用紙と期日前投票をすでに済ませた有権者をチェックした名簿を提出します。これらのデータと電話による支持要請によって回収したそれを合わせて獲得投票数の推計を出します。2012年米大統領選挙においてオバマ陣営は激戦州バージニアで同様の手法をとっており、クリントン陣営が採用したことは間違いありません。

 投開票日が近づくほど、ことに「何人の標的となっている有権者とコミュニケーションをとったのか」が重要度を増します。というのは、クリントン・トランプ両候補のどちらに投票をするべきか決めかねている「無党派ジレンマ層」を訪問して、投票日直前までコミュニケーションを図ることが投票に結びつくからです。その一方で、投開票日直前に起こる驚くべき出来事、即ちオクトーバーサプライズも投票行動に変化をもたらす可能性があります。

 今回の米大統領選挙では、決めかねている無党派ジレンマ層がボランティアの運動員と投開票日直前に交わしたコミュニケーションに価値を見出すのか、オクトーバーサプライズを重視するのかがクリントン・トランプ両候補の勝敗を左右すると言えます。

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