2023年2月8日(水)

母子手帳が世界を変える

2016年11月9日

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杉下智彦 (すぎした・ともひこ)

東京女子医科大学国際環境・熱帯医学講座教授

東北大学医学部卒業。ハーバード大学公衆衛生大学院(公衆衛生修士)、ロンドン大学アジア・アフリカ研究大学院(医療人類学修士)、グレート大学キスム校大学院(ケニア)にて博士(地域保健開発)を取得。を取得。青年海外協力隊でマラウイに派遣(外科医師)されたことをきっかけに、国際協力機構(JICA)の国際協力専門員(保健課題アドバイザー)として、アフリカを中心に30か国以上で保健システム案件の立案や技術指導に携わるほか、WHOや世界銀行などとともに「持続可能な開発目標(SDGs)」や「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」などの策定に関与。2014年ソーシャル・ビジネス・グランプリ大賞受賞。2016年医療功労賞受賞。2016年10月より東京女子医科大学国際環境・熱帯医学講座(教授/講座主任)。

 ウェレ博士は、ナイロビ大学の地域保健分野の初代教授や医学部長を務め、UNFPAなどの国連機関の代表を歴任し、アフリカ最大の保健NGOであるアフリカ医療研究財団(AMREF)理事長やケニア国家エイズ対策委員会(NACC)委員長などの要職を務めた、「アフリカでもっとも有名な女性医師」のひとりです。2008年にはその素晴らしい功績により「第1回野口英世アフリカ賞」を授与され、まさにその授賞式に出席するために日本を訪問されたときに母子手帳と出会い、その素晴らしい内容に感銘を受けたそうです。

 女性のエンパワメントを生涯の仕事にされているウェレ博士において、「母子手帳」は日本とアフリカの保健協力のシンボルとなりました。帰国後、教え子でもあるワマエ医師とともに、パイロット実施の成果をもって保健大臣に進言し、ケニア政府から予算を確保したうえで、2010年にケニア母子手帳全国展開を宣言しました。発表会には、日本から国際母子手帳委員会委員長の中村安秀大阪大学教授や近隣諸国の母子保健担当者も駆けつけ、ケニアのみならずアフリカ大陸における母子手帳の普及を願って関係者の心が一つになった瞬間です。

ウェレ博士と筆者(右から3人目、4人目)、およびケニアで活躍する青年海外協力隊員

 現在ケニアでは、年間100万冊の母子手帳を自分たちで印刷・配布しており、母子手帳の内容もWHOの母子保健政策の変更などを反映し、数度の改訂を経て現在に至っています。2012年10月には、アフリカ大陸で初めてとなる「第8回母子手帳国際会議」がナイロビで開催され、24カ国(アフリカからは14カ国)から300名を超える関係者が集いました。

 ケニアにおける母子手帳の発展の歴史を振り返るとともに、ケニアからアフリカ全土へ、そしてアフリカとアジアとの連帯と協力という壮大なテーマで議論が深まりました。このようなドラマティックな発展を陰で支えてきたのが、ワマエ医師そしてウェレ博士の二人であることを、忘れてはならないと思っています。

第9回母子手帳国際会議にてミリアム・ウェレ博士(中央)とマサイ族の保健師さんたち

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