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2016年11月12日

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 また「なぜ今多くの企業がカンバセーションUX開発に取り組むのか」については、

1、マシン・ラーニングなどの発達により、開発が容易になりつつある。 api.aiの実験では、3人の人間がシステムの前で会話をした時、システムは会話の8割を理解した、という。もちろん8割は十分な数字とは言えないが、会話のコンテクストをシステムがかなり理解し、反応できるという点でマシン・ラーニングによるさらなる訓練が可能となる。

2、より複雑なデバイスやサービスが一般化していること。一昔前は高価なPCでしか出来なかったことが、現在では携帯スマホで行える。ウェアラブルとして腕時計などのデバイスも出ており、モーションジェスチャーによるシステムへの指示も可能となった。

3、メッセージ・プラットホームの充実。ライン、フェイスブック、グーグルプラス、スカイプその他チャットができ音声通話も可能なアプリが数多くある。これらを音声チャットのプラットホームとして利用できる可能性が広がっている。

 一方で現状では乗り越えるべき壁も多い。最大のものは「質」である。ワトソンのような高価なシステムはともかく、普及バージョンとなるボイスチャットはオープンソースの技術を用いたより単純なものとなる。それゆえ会話が成り立たない、誤解が多い、などの問題が生じがちだが、これが多すぎると顧客の興味を引くことはできない。

 また、音声コマンドによるシステムの反応が「普通にウェブでサーチを行う」より迅速かつ正確な結果を導かなければ、こうしたUXを利用する人は少ないだろう。

 そして会話のコンテクストから「誰が」「なんの目的で」「何を求めているのか」をボットが理解するのか、という問題だ。もちろんAIであるから音声認識(音声により特定個人を認識する)が可能だが、例えばクロス・プラットホーム、つまり他人のデバイスにある同じUXはただちに同一個人を特定し、その個人に特有の反応を示すのか(嗜好、話し方の好みなど)。その場合、個人のプライバシーはどこまで守られるのか。

隆盛するチャットボット

 米国ではチャットボットと呼ばれる、AIによるチャットアシスタントが隆盛だ。現時点でそれぞれのボットは、例えば旅行(個人的な嗜好、日数などを告げるとボットが旅行先をリコメンドする。それに伴うホテルや航空券予約も同一プラットホームで行える)、スポーツ(特定のスポーツの試合中継、結果、チームの順位、チームメンバーの詳細情報、試合日程などをリサーチできる)などに特化している。音声ボットも同様のサービスを行うが、多くのサービスの中から「このボットが自分にとって最も便利」と感じられるサービスを顧客が選び出せるのか、という問題もある。

 グーグルはオンラインでログインすればメールからクロームによるウェブサイト、ドライブでの個人情報などに、どのデバイスからでもアクセスできるサービスを持つが、音声ボットも同様にどこにいてどんなデバイスからでも音声により利用者を認識し、最適のサービスを提供する必要がある。これを実現するためには単一のプラットホームを構築し、それがアップルであろうがマイクロソフトであろうが利用できる、というシステムになるのか、それとも個々のOSが異なるサービスを提供するのか。まだ始まったばかりの音声ボットだけに、その将来は今後の開発競争にかかっているとも言える。しかしワトソンが提供するコグニティブサービスを、一般の人々が比較的安価に利用できるようになる日は近いかもしれない。

  
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