2024年11月5日(火)

From LA

2016年11月9日

 Deepsense.io社は、日本のNTTソリューションズ、ドコモ、日立ソリューションズなどもクライアントに持つ、マシン・ラーニング開発導入を行う企業だ。11月7−9日、サンフランシスコで開催されたAIワールド・エキスポで、同社のデータ・サイエンティスト、ジャン・レーセク氏がマシン・ラーニング市場の現状についての分析を行った。

3つのエポックメーキング

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 同氏によるとマシン・ラーニングの発展にはいくつかのエポックメーキングな出来事があった。まず1997年、スーパーコンピュータのディープ・ブルーがチェス王者のカスパロフに勝利したこと。次に2004年、ニューロ・ネットワークシステムにGPUが導入されたこと。そして、11年にはDNN(ディープ・ニューロ・ネットワーク)が交通標識の読み取りで人間に勝利したこと、IBMワトソンがジェオパディ(アメリカのクイズ番組)で人間に勝ったこと、グーグルの自動運転テストドライブが14万マイルに到達したことの3つが挙げられる。その後2013年には米政府が複数の州で自動運転のテスト走行を認め、16年にはグーグルのアルファ「碁」が碁の世界王者に勝利した。

 現在マシン・ラーニングはどのような分野に応用されているのか。

 まず、我々が日常的に接しているものとして、Eメールを迷惑メールかそうでないかを判定するシステムに使われている。特定のキーワードやアドレスなどを機械に学ばせることにより、自動的に迷惑メールをフォルダから排除するシステムだ。

 同様に、コンピュータウィルスやマルウェアの割り出しでも現在マシン・ラーニングによる割り出しが一部のウィルス用ワクチンと同等の結果を見せているという。マシン・ラーニングによるウィルス割り出しはPDF、Java scriptなど、メール送信によるウェブサイトへの誘導のみならず、色々な罠に対しユニバーサルに対応できる強みがある。

 次に、商業用のDMの送付相手を割り出すこと。従来のランダム方式のDM発送では、その返答率は0.2%にとどまっていた。しかしマシン・ラーニングによって、例えば「どの顧客がクレジットカードの申し込みをする可能性が高いか」を割り出し、ターゲット化してDM送付することにより、返答率は9.2%にまで高まった、という。

 銀行業務においてもマシン・ラーニングは特に詐欺の追求において有効だ。顧客の購入パターン、居住地などを学ばせることにより、例えば普段はロサンゼルスに住む顧客のカードが遥かに離れた場所で使われた場合、すぐにメールなどで「このカード利用はあなたによるものか」を確認する。確認が取れるまで引き落としを保留する、などのサービスが提供できる。さらに顧客についてローン破綻の可能性も数値化できる、他の銀行に乗り換える可能性も予測する。

 石炭坑道における落盤の予測についても、過去のデータを元にある程度の予測が可能となった。ポーランドでの実績では31%の確率で危険な落盤、小地震などを正確に予測したという。

 ユニークなところでは「セーバーメトリクス」と呼ばれる、主に野球選手の評価、将来の可能性の数値化がある。これはスカウトの現場などでアメリカでは実用化されている。個人成績が出る野球ではサッカーなどと比べると、選手を数値としてデータ化するのが易しいのだという。

 最も成果が目覚ましいのは医療の分野だろう。特に糖尿病による網膜症について、眼球のスキャン画像から進行度などを正確に割り出すプログラムが実用化されている。IBMのワトソンはある種の皮膚がんを95%の確率で罹患診断するが、医師による診断の正確さ、74ー85%をしのぐ数字だ。


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