もし米国の次期大統領がドナルド・トランプ氏になったなら、アフォーダブル・ヘルスケア・アクト、通称オバマケアは恐らく廃止になる。しかしそれを待たずして、オバマケアはすでに崩壊の危機に瀕している。
今年に入り、オバマケアのマーケットプレイスから脱退する、と発表した保険会社が後を絶たない。マーケットプレイスとはネット上に各保険会社が個人向け健康保険プランを提示し、顧客がプランを比較検討し購入できる場所のこと。年収などにより異なる保険料も明記される。8月にはついに大手保険会社であるエトナ社が、現在オバマケアを提供している15の州のうち特に損失額の大きい11州から撤退する、と発表した。
なぜこのようなことが起きるのか。それにはオバマケアの仕組みについての説明が必要だろう。オバマケアは全国民を対象とするものではない。企業に勤める人々は企業が半額から全額を支払う健康保険制度がある。これからはみ出す人々、自営業者や零細企業、無職で健康保険を持たない人の救済措置として生み出されたのがオバマケアだ。
米国の一般的な健康保険制度は、保険会社が提供するプランを利用者が買う仕組みだ。しかしプランは非常に複雑で、例えば病院に行くたびに一部費用を負担するかしないか、その負担額、さらに高額治療の場合に免責金額を設定するか否か、その金額などにより保険料が異なる。
オバマケアとは、収入に応じて政府が保険料の一部を負担し、誰もが健康保険を持てるようにする、というものだ。カリフォルニア州の場合、ロサンゼルス郡のマーケットプレイスには7社が20種類のプランを提供している。通常で購入すれば月々400ドル前後のプランだが、収入に応じて政府による補助金が加算され、数十ドルでも購入が可能だ。ただし安いプランでは免責金額が非常に高く、実際に医者にかかると数百ドル単位の出費となる。