オバマケアで損失を垂れ流す保険会社
2016年、オバマケアの加入者は1270万人となった。しかし保険会社にとってはオバマケアは「損失を垂れ流す」ものとなっている、という。エトナの場合、今年度の損失額は3億ドルとも言われる。保険対象が低所得層であり、プランも比較的安いものが用意されているが、それに対し保険の使用率が企業が想定していたよりも多かったためだ。
別の大手保険会社、ブルークロスは今年の保険料を州により前年比で64%近く上昇させた。つまり営利企業が保険を仕切っている限り、「誰もが入れる低価格の健康保険」というのは絵に描いた餅のようなもの、ということが徐々に露呈している形だ。
ところで米国には政府保証型の健康保険も存在する。67歳以上に提供されるメディケア、貧困層に提供されるメディケイドなどだ。これを国民全般に広げ、企業が提供するのではなく国が提供する健康保険を、という声は以前からある。
その代表とも言えるのが、民主党の大統領指名を最後まで争ったバーニー・サンダース氏だ。同氏はエトナのオバマケア撤退のニュースを受け、「メディケア・フォー・オール」システムの推奨を訴えた。「健康保険は利益を出すことを目標とする営利企業に委ねてはならないものだ」との声明を出した。ただし長く保険会社による健康保険制度が実施されてきた米国の制度を一気に変えることは困難だ。健康保険を政府が行うことで巨大保険会社が破綻し経済に影響が及ぼされることも懸念されている。
一方ドナルド・トランプ氏はエトナの撤退を「ほんの手始めに過ぎない」として、オバマケアという制度そのものに欠陥がある、と指摘。今後もオバマケアから撤退する保険会社が増えるだろう、と批判の目を向ける。