今回の投票で私が最も迷ったのは、ベストナインのパ・リーグ遊撃手部門である。守備率と失策数で比較すると、1位が9割8分2厘、11個のソフトバンク・今宮健太。2位が9割7分9厘、14個の日本ハム・中島卓也。3位が9割7分8厘、14個のロッテ・鈴木大地。彼ら上位3チームの正遊撃手は3人とも130試合以上に出場しており、数字上はほとんど遜色がない。一方で、打撃成績は鈴木が打率2割8分5厘でトップ10に入り、27位の今宮(2割4分5厘)、28位の中島(2割4分3厘)を大きく凌駕している。守備を評価するゴールデングラブ賞とは異なり、ベストナインは打撃も加味した上での投票となるから、鈴木が選出されることは大方予想がついた。
しかし、私はあえて中島に1票を投じた。今季の中島は常につなぎ役に徹し、犠打の数も鈴木の16個、今宮の38個をはるかに上回るリーグ最多の62個。ただ単に走者のいる場面で機械的に送りバントを繰り返していたわけではなく、好投手に対しては執拗にファウルで粘り、そのぶん球数を投げさせ、ときには四球を選んでチャンスを広げている。
いぶし銀
クリーンアップを打つ大谷、中田翔、ブランドン・レアードが勝負を決める一発長打を打つ前に、中島が相手バッテリーに十分プレッシャーをかけていたケースも決して少なくなかったはずだ。セ・リーグでも広島・菊池涼介、ヤクルト・川端慎吾ら、攻撃的な2番打者が増えている今日、そういう昔ながらの〝いぶし銀〟をベストナインの遊撃手に選ぶ記者がひとりぐらいいてもいいじゃないか、と考えたわけだ。ちなみに、得票数はトップの鈴木が118、中島が67、今宮が42だった。
MVPの投票用紙は記者が所属する会社、及び記者個人宛てに日本野球機構(NPB)から送られてくる(私の場合は、週1本以上の記事を寄稿している東京スポーツ新聞社・赤坂英一宛て)。選手名の誤記、及び無記名投票は無効とされる決まりだ。記者の誰もが責任を持ち、厳格な規則に則って投じた1票が最終結果となることを強調しておきたい。
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