2024年4月20日(土)

対談

2016年12月8日

誰がAIを「教育」するのか

飯田:その一方で、「機械対人類」ではなく、「機械対個人」という競争はあるのかな、とも思うんです。30年以上も知識量を積んできた人が、横から出てきた検索エンジンに代替されてしまう。当人にとっては、自分の30年は何だったんだ……となってしまう。僕も仕事で対談をするときは、まずとりあえず名前を検索して、どういう方なのか調べますし。飛躍的に楽になっていて、もう元には戻りようがないでしょう。

 そこで興味があるのは、ビッグデータのような大量のデータをAIを用いて処理するときに、人間が果たす役割はどこにあるのかということです。つまり、同じようなAIと同じようなビッグデータを使っても、プロジェクトのリーダーである人間によってアウトプットがどう変わるのか、そこに強い関心を持っています。

飯田泰之氏

矢野:同じようにコンピューターを使っても、人や企業によってアウトプットがまったく違いますよね。AmazonやGoogleはものすごくうまくやったわけですが、そこまでうまく活用できる企業はまだ少数で、AIについても同様に人によって使い方が違ってきます。それでもAIを部品のように使う時代が、遠からず訪れるとは思います。

 AIが囲碁のトップ棋士に勝って話題になりましたが、私は「人間に勝った」という言い方が大嫌いなんです。コンピューターのデータを駆使した英国一流大卒の優秀な人たちと、自身の知と経験だけで戦った人たちがいたという話だと思うんです。カーレーサーと陸上選手くらい土俵が違うんです。

 AIはさまざまな学習機械の組み合わせです。非常に複雑な戦況からの次の一手を絞り込むエンジンがあり、形勢を評価するエンジンもまた別にあるわけです。複雑な機械の組み合わせに過去の棋譜を学ばせて、そうして強くなったAI同士を戦わせることで、存在しなかった棋譜を大量に作り、また学習する。いくつもの学習が組み合わさっているんです。

飯田:まさに教育ですね。上手に教育できたAIが強くなっていく。


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