2024年12月23日(月)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年4月29日

しかし、先生が発行してくださる通信を読んで、子どもたちの劇の中から生まれてくる思いを知り、こんなにも5、6歳の子どもたちが、物語の底にある人間のエゴ、生きていく辛さ、悲しみを共感し、風の谷の子どもたちの強さというのは、こういうところからも出てくるんだな、と感じました。あまりにも高いねらいで、私には想像がつきませんでしたが、劇を演じている子どもたちを観て、それが決して高すぎたわけではないこともわかりました。そして、演じるということの楽しさを、本当の意味で体得した子どもたちだと思います。いつものことながら、子どもに“本気”でかかわる先生方に脱帽! の一言です。
奏は前日に床に入ってからボソッと「奏はうまくいかないんだ」と言います。どんなところかと聞くと、「笑うところじゃないのに恥ずかしい気持ちで顔がニコニコしちゃうの」と言います。翌朝、髪を結いながら、「急にお家がなくなって逃げなくちゃならなくなったらどうする? 本当に自分がそうだと思えたらニコニコしないかもね」と話すと頷いている奏。
終わってから「奏の顔どうだった?」と聞くので「本当に困っている顔だったよ」と伝えると「自分ではどんな顔をしてたかわからなかった」と言います。なるほど、本当に心から演じたんだなぁと私もびっくりしてしまいました。                              風2組 「れんらくちょう」より

 この中で親が指摘しているように、幼稚園の発表会は「大人の満足のために行われる会」になりやすいのかもしれない。しかし、風の谷幼稚園ではそんな心配は無用のようだ。

 そして、ここまで本気で取り組んだ「劇作り」が子どもたちの心を大きく育てたという事実は、改めて書く必要もないだろう。


※次回の更新は、5月13日(木)を予定しております。

風の谷幼稚園
園長・天野優子氏が、理想の幼児教育を実現するためにゼロから建設に乗り出す。様々な困難を乗り越え、1998年に神奈川県川崎市麻生区に開園。「人間が人間らしく、誇りを持って生きていく」ための教育を実践している。

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