AIはシンギュラリティの夢を見るか?

2017年2月15日

»著者プロフィール

新しいプラットフォーム

 アマゾンは新しいプラットフォームをつくろうとしている。アップルやグーグルは、それぞれiOSとAndroidというプラットフォームを提供している。サービスの提供者は各プラットフォーム向けのアプリを開発し、利用者はスマートフォンでアプリを使ってサービスを利用している。アップルがiOSを自社のiPhoneやiPadだけに搭載し、それらの販売によって主要な収益を得ているのに対し、グーグルはAndroid OSをスマートフォンメーカーに無償で提供し、Android OSと親和性の高い自社の検索サービスの利用者を増やして広告収益の向上を狙っている。アマゾンのビジネスモデルはグーグルのそれに近い。

 自動車や冷蔵庫のような他社の製品から、Alexaに音声でリクエストを送れるようにするための開発環境(Alexa Voice Service)を、アマゾンは無償で提供している。また、Alexaがガレージのシャッターを開けるにはガレージを開閉するサービスがAlexaとつながっている必要があるが、そのためにアマゾンが提供している開発環境(Alexa Skills Kit)も無償で使用できる。

アレクサとの接続

 Alexa対応の製品が増え、それを使って利用できるサービスが増えれば、音声でサービスを利用する(ボイスインタラクション)という新しいユーザーインターフェースの体験が広がっていくだろう。スマートフォンがなくなることは当分ないだろうが、スマートフォンなしに音声で利用するほうが便利なサービスやシーンは多く潜在しているはずだ。アマゾンはそれを顕在化し、人々が自社のEコマースを利用する機会をさらに拡大しようとしている。

アレクサの課題

 スキル(Skill)と呼ばれるAlexaに接続したサービスは、アマゾンの米国のサイトにリストされている。最近ではクイズのような単純なものも含めて毎月1000以上のペースで増加している(2/7時点で約8000)。ちなみに、昨年の6月にアップルが発表したアプリの数は1年で50万増えて200万に達したという。ユーザーは自分が必要とするものとどのように出会うのかというスマートフォンのアプリと同様の問題に加え、Alexaのスキルには「覚えていてもらえるか」という問題がある。Alexaのユーザーは、呼び出すためにスキルの名前を覚えておかなければならないのだ。

 Alexaが新しいプラットフォームになるための課題は多い。スマートフォンから独立しようとするAlexaのチャレンジが「Amazonは世界一の失敗をする企業」というジェフ・ペゾスの言葉の新たな例にならないように、新しいものが大好きな人達が面白がって使っている今のうちに、なぜ音声アシスタントが理解できるように気を使って話さなければならないのか、なぜAIのくせに(ユーザーはそう思うはずだ)学習してくれないのか、といった将来のユーザーの素朴な疑問を解決しておく必要がある。

 スマートフォンでタッチ操作するユーザーインターフェースについては、アプリの解りやすさやグラフィックのデザインだけでなく、ユーザーが実際に使用したときに感じる体験のデザインが重要視されてきた。しかしボイスインタラクションという新しいユーザーインターフェースは、まだユーザー体験のデザインを議論するレベルにはない。

 検索や地図などの自前のサービスを持つライバル、アップルのSiriやグーグルのAssistantと違い、Alexaはサードパーティーのサービス(スキル)への依存度が大きい。ユーザーはAlexaにリクエストしたつもりなので、「わかりません」と答えられるとAlexaの能力に問題があると感じるだろう。少なくとも、それがAlexaが原因なのか、スキルが原因なのかはよくわからない。現時点ではスキルを増やすことよりも、ボイスインタラクションという新しいユーザーインターフェースの体験の向上を優先すべきだ。自然言語認識の能力向上(さらなる機械学習)とAlexa Skills Kitの機能拡張が必要だろう。

関連記事

新着記事

»もっと見る