2024年11月22日(金)

ちょっと寄り道うまいもの

2010年5月25日

 八丁系の味噌と赤ワインなどで煮込んだものを、熱した土鍋で供する、その熱々の香ばしさがよろしいのか、赤ワインにも素晴らしい相性なのだ。私にとっては唯一無比の煮込み。イタリアンでトリッパの煮込みとワインを楽しむのと、同じ類の幸せ。居酒屋というよりも、日本のビストロと呼びたい店である。

 飲みながら、カウンターの向こうの3代目に聞いたところでは、先代までは普通のものだったが、フレンチの修業を経て後を継ぎ、現在のような味へとしてきたものだという。


  この煮込みのみならず、ウズラの焼き物やら、サラダの類や生ハム等々、ワインを飲んでくれと言ってるような肴が数知れず。ソムリエ資格を持つスタッフもいて、これが見事に的確なアドバイスをくれる。煮込みとの幸せな幸せな結婚〔マリアージュ〕。

 と、こんなことばかり書いていると、誤解されそうだが、和の肴も酒もなかなかのセレクションなのである。つまり、生の魚は苦手というボルドーからの客も、せっかく日本に来たのだから、日本らしいものを、というオーストラリアのシェフも、地方にはないような店をという造り酒屋の主人も満足させられるというオールラウンドプレイヤーなのである。混むのも道理。

 さて。ワインも1本空いた。お腹も満ちた。長居は無粋だ。締めに銀座のバーへ行こう。

スタア・バー・ギンザのマンハッタンは、 優しく、そして凛とした絶妙の味わい

 老舗から新興勢力まで、お薦めはあまたあれど、私にとっては何と言ってもスタア・バー。バーテンダーの世界コンクールで優勝した名人、岸久〔きし ひさし〕さんがオーナーのこの店が一番落ち着き、酒を楽しむことが出来るところである。

 連れには、そのコンクールで優勝したという名物のカクテル、ミルキーウェーを試してもらおう。甘めではあるが、普段は甘いのは……という輩でも、これだけは例外と認めるはずだ。私は、クールダウンにマンハッタンでも。

 マティーニもそうだが、ただただドライ、ハードボイルドというわけではなく、優しい味わいなのに、ぎりぎりのところで決まっている。手前では間が抜け、越えたら野暮。そのまさにそこしかないというところで決まる味。

 そんなことを考えていると、また、マティーニが飲みたくなった。いけない。食前が似合うこのカクテルを飲んだら、また振り出しに戻りそうだ。ネグローニかウイスキーで締めにするか。

 ということで、連れも東京の飲食の奥深さ、レベルの高さを再認識するというお話。


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