2024年4月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月27日

 英政府は、最高裁の判決に従い、「首相はEU条約50(2)条の下でEUから離脱する英国の意思を通告することが出来る」という僅か2パラグラフの法案を既に提案し、2月9日に下院で可決されています。加えて、議会の要求に応じて、政府は離脱戦略に関する白書が2月2日に議会に提出されています。この白書は先のメイ首相の演説と内容的には大同小異のものです。以上に基づき議会で議論が行われますが、国民投票の結果が覆ることは予想されておらず、法案の審議が滞り3月末までに離脱通告を行うというスケジュールに狂いが生ずることも予想されていないようです。

議会は国の将来に関する議論の中心

 この社説は、議会は国の将来に関する議論の中心にあるべきだとして、最高裁の判決を歓迎しています。しかし、どの程度まで議会が離脱プロセスに関与すべきかについては、明確なことは言っていません。労働党、社民党、スコットランド国民党には法案の審議において法案に修正を加え、離脱のあり方に注文を付けることを狙っている議員がいるようです。これに対し社説は、離脱プロセスの細部に干渉し、政府の手を縛ることは間違いだ、と述べています。それはその通りでしょう。

 結局のところ、法案の審議、その後は交渉経過について随時政府に報告を求め質疑を行うことしかないのではないでしょうか。社説は交渉の最終的な結果について議会が投票を要求する可能性に言及しています。メイ首相は先の演説で最終合意をその承認のために議会の投票に付すことを既に約束しています。同首相としては議会が不承認であれば独自の途を歩むことを覚悟で投票に臨むのでしょう。

 もう一つ、社説が指摘している問題がスコットランドなどの地域政府との関係です。最高裁の判決は「地域政府と協議はするが交渉は政府の責任で行う」とするメイ首相の立場を承認するものですが、それ自体は問題を解決するわけではありません。メイ首相は、27カ国との交渉結果が満足すべきものでない場合には独自の途を選択するという強い姿勢のように見受けられるので、英国の統一を保つための努力はメイ首相にとって一段と重要なものとなるでしょう。

  
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