2024年11月22日(金)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年5月19日

 僕は、高校のときにあまり物理が好きじゃなかったんだけど、将来必要だと思っていたからあまり苦にはならなかったです。やっていること自体でいえば、化学のほうが好きでした。実験とか。でも、自分がずっと実験室にいて研究している姿はどうにも描けなかったんですね。地球科学の分野だと、野外にいくチャンスがけっこうあるんですよ。そういうところに行きたいという気持ちは強かったですね。

●惑星探査の分野で、日本はがんばっていますね。

科学雑誌『Science』で、「はやぶさ」の特集が組まれた(2006年6月2日号)。表紙写真は小惑星イトカワ

―― アメリカの存在感はやはり大きいですが、日本が自前で「かぐや」や「はやぶさ」を遂行したのは大切なことで、評価も高い。月探査は中国やインドもやっていますが、中国では科学的な成果はそれほどありません。インドの場合は欧米の観測機をたくさん積んで成果を出した。それも一つのやり方ですが、「かぐや」は日本産にこだわりました。

 日本が探査をやっていることが知られて、宇宙の仕事への興味は広がっていると思います。今後は、探査の魅力も含めて宇宙の魅力を伝えていくのが重要ですね。いままでは、研究者は自分の研究を一所懸命やって世界最先端のものを出せばいいんだ、という風潮がなきにしもあらずでした。でも今はそれだけだとまずいですね。大きなお金を使っているわけですから。

●ツイッターで探査機につぶやかせたりするのはおもしろいアイディアですよね。

―― ツイッターでは「はやぶさ」のアカウントがあり、帰還中の様子をつぶやいています(@Hayabusa_JAXA)。フォロー数も増えていて、こうした応援は嬉しいです。

国立天文台・水沢VLBI観測所の前にある、「かぐや」の10分の1模型の前で

 まもなく地球に帰還する「はやぶさ」がサンプルを回収できたのか。それがわかるのには少し時間がかかるでしょう。打ち上げからサンプル回収までは、回収装置の蓋があいた状態にあるので、イトカワのサンプル以外にも、いろいろなものが入ってしまっている可能性があります。そうすると、何か入っていたとしても、それがイトカワのものなのかどうかを確認する作業が必要なんですね。サンプルをもって無事帰ってきたとしたら、そこに宇宙風化作用を受けた粒が入っているかどうかを確認したいですね。私は分析のチームにいるわけじゃありませんが、やはり気になります。私としては、宇宙空間で影響を受けているものが入っていれば、と思っています。

 でもまずは6月13日にはやぶさが無事に戻ってくることを願っていますね。

◎略歴
■佐々木晶〔ささき・しょう〕 国立天文台教授。アリゾナ大学月惑星研究所研究員、広島大学理学部助手、東京大学大学院理学研究科助教授等を経て、現職。 火星探査機「のぞみ」、月周回衛星「かぐや(セレーネ)」、小惑星探査機「はやぶさ」など、日本の惑星探査プロジェクトの多くに携わり、数々のミッション を支えている。

「WEDGE」 6月号より

 

 

 

 

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