2024年12月23日(月)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年5月19日

日本の惑星探査プロジェクトの多くを支える惑星科学者・佐々木晶氏。
その研究は、火星周回のダスト計測や、月の地形や重力分布観測、
小惑星イトカワの観測など、惑星探査の将来に貢献している。
宇宙空間の環境を探る研究にも力を入れ、宇宙進化の謎を追いかける。

※前篇から読む方はこちら

高井ジロル(以下、●印) 地球以外で生命が存在する可能性についてはどう思われますか。

インタビューに答える佐々木氏

佐々木晶(以下、「――」) 生命の存在環境、発生環境に興味があります。生命が存在できる環境がどうであるかについて、まだ完全にはわかっていない。太陽からの距離、大気の性質などいろいろな要件がからんでくるので、シンプルにこういう環境だから存在できるとは言えない。生命というのは発生しやすいものなのか、発生しにくいものなのかということも気になります。発生しやすいものだとしたら、少々状況が厳しいところでも生命が活動しますよね。そういうものだったらおもしろいなぁと。少なくとも昔に比べると、生命存在の可能性は高くなっていますよ。惑星がいろいろ見つかってきていますから。

 生命そのもののもそうですが、生命が存在できる環境のほうをもうちょっと調べないといけないんじゃないかと思います。最近は少し雲行きがかわって、火星はいまでも火山活動があるんじゃないかと言われていますが、それをきちんと観測できないか、と。最近、金星で火山活動があったという観測結果が出ています。いままでは、地球と木星の衛星イオの二つは非常にアクティブで活動的な天体だけれどもそのほかはあまり活動していない、というイメージがあった。でも、決してそうではなく、火星も金星も活動的だった、そういう太陽系像になっていくんじゃないかと思います。

 探査は、あれもこれもできるわけではないし、自分ひとりでできるものでもない。でも、日本はお金がないから月しかやりませんよとか、火星しかやりませんよというのは、あまりにも淋しいですね。いろんな計画を考えて、ときとタイミングに応じてできる限りのことをやるしかない。現実的なシナリオとしては、月に一度着陸するのが非常に重要だと私は思っています。

●研究者としての自分を自己分析するとどうなりますか。

―― あまり過去にはこだわらないけど過去を捨てきれないタイプ、かな。新しいこと好きですね。あとは、自分の仕事としてやろうと思わないと、勉強できないタイプ。学生のときは将来の血肉のためにいろんなことを勉強して身につける作業が必要ですが、いまは違う。時間も限られる。これはぜったいものにしてやるぞという思いがないと、やっていけないのではないでしょうか。


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