「かつては市場に卸していましたが、直売所のほうがお客さんと直接対話しながらきちんと販売できます。自分はいい野菜を届けてお客さんの健康を守る。その代わり、お客さんはお金を出して私たちの生活を守ってくれている。そういう自信と誇りをもって商売ができます」と、芦田さん。
このようなすばらしい店はまだ少ないが、前出の青木氏は、「直売所が野菜流通の2割まで増えればよいと思う。そのためには、多様な店舗業態が入り混じる直売所をジャッジする(監督や批評をする)存在や、店舗サイズの一定化が望ましい」という。
販売チャンネルの多様化・安定化がカギ
直売所のほかネット通販など、小売店の選択肢が増えているのは、野菜を求める消費者のニーズが変容しているからである。実際、今春の農相発言を受けて出荷された5トンの規格外野菜も、うち4トンが売れたという。もともと規格外野菜を出荷しておけば、廃棄や加工に回さずとも済み、あれほどの価格高騰を引き起こすことはなかったかもしれない。
規格を設定することによって、大量流通の太いルートは確立された。だが、画一化された工業製品のように野菜を扱うことで、大手スーパーなど一部の買い手が力をもち、消費者は大量流通型の業態から野菜を入手することが当たり前になってしまった。
そこからあふれた規格外品を扱う場所を確保し、消費者ニーズに合わせて多様な商品を扱う流通業態を柔軟に模索することが大切ではないだろうか。
*関連記事『安さだけじゃない 農産物直売所が流行るわけ』が、WEDGE6月号でお読みいただけます。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします