たとえば、きゅうりの規格を見てみよう。
判断基準となるのは曲がり具合や長さ、包装の仕方。だが1.6センチ以上曲がれば、B級品。等級は「品質」についても定めるとは言うが、その実、味については何の記述もない。まるで規格=形状とも受け取れるほどである。
スーパー、流通関係者にA級品ばかりをそろえる理由を聞いてみた。みな一様に口をそろえ、「不ぞろい品は消費者が買わないから」という。しかし、さほど味に偏りはないはず。「現状では流通に不利になる不ぞろい品を生産者に出荷させないようにするための口実」という関係者も少なくない。規格適用の背後に見え隠れするのは流通の都合を優先した論理だ。その論理に従って市場に出回る野菜が決められ、消費者の“野菜の常識”が決まってしまう。
直売所増加に表れる消費者ニーズ
大量販売の業態とは間逆の直売所が近年増加している傾向は、大量消費型に消費者が飽きているということの表れかもしれない。「直売所がはやるのは、天候不順のときだけ」(JAひたち野)と冷ややかな向きもあるが、それでも直売所は現在1万5000店ほど。セブン-イレブンの数より多い。年間1億円以上を売り上げる店舗も少なくない。
主婦が直売所を利用する理由はさまざまだ。「調理すればいびつな形は気にならないし、安い」「新鮮そうな野菜がそろっている」「スーパーでは売らない野菜があって、おもしろい」など。「近年では情報が増えてきて、消費者も直売所で売っている野菜だってよいものなんだ、というふうに変わってきた」(直売所研究会・青木隆夫事務局長)ようである。
また、直売することは生産者側のモチベーションにつながる例もある。千葉県は北総線の白井駅に、ユニークな直売所がある。電車が10本に1本ほどの頻度で止まる郊外駅の改札内に、「ほのぼの芦田農園」がある。経営は父・母・息子の家族3人。主に母・芦田恵子さんが、長机を並べただけの簡素な売り場に立つ。ここでは“旬産旬消”があたりまえ。季節にとれるおいしい旬の野菜しか販売しない。露地栽培で採れたものを自家用車で運びこむから、価格も安い。その味が都内で野菜レストランを展開する会社の目にとまり、レストラン卸しも行うようになった。