人道支援NGO「国境なき医師団」はEU・トルコ合意に抗議してEUと加盟国政府から支援を受けない方針を貫いている。トラウマによる自殺未遂や自傷行為が相次いでいるのはレスボス島だけではない。サモス島では今年1月だけで12件の自殺未遂、6件の自傷行為が報告されている。
トルコは難民対策のためEUから60億ユーロの支援を順次受けているが、EUへの査証なし渡航の見通しは立っていない。ドイツは今年9月の総選挙を控え、トルコ・EU合意が破綻して再びギリシャに難民が殺到し、ドイツを目指してバルカン半島を北上するのを防ぐため、3月15日以降にドイツに入った難民についてEU域内の最初の入国地に送り返している。また、EU域内の旧東欧諸国は難民受け入れに関して強い拒絶反応を示している。
ギリシャとイタリアに流入した難民のうち16万人をEU加盟国に振り分けるというEUの計画は今年2月時点で1万1966人(7.4%)しか進んでいない。保守化が進むハンガリー、ポーランド、オーストリア、デンマークの受け入れ数は未だにゼロのままだ。自分勝手なEUの政治力学の中で難民たちの漂流はまだまだ続きそうだ。
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