2024年12月12日(木)

田部康喜のTV読本

2017年4月26日

 外は吹雪になった。村井(三浦)から最寄りの駅に明日香(門脇)と一緒に着いたという連絡が入る。「タクシーが捕まらないので、車で迎えにこい」と怒鳴るのだった。

 運転ができる浅見と広沢は、ビールを飲んでいた。浅見は、「万が一警察が取り締まりをやっていて捕まった場合に、高校教諭の内定が取り消しになる」と断る。広沢が行くことになる。深瀬は、急いでコーヒーを小さな魔法瓶に入れて広沢に渡す。それが広沢を見た最後だった。

 最寄りの駅になかなか迎えがこない村井から、いらだった電話があって、不安になった浅見と谷原が歩いて広沢の車を追うことになった。そこで見つけたのは、ガードレールを突っ切ってがけ下に落ちた車で、あっというまに炎を上げた。

 広沢の死体が川の下流で見つかったのは、半年後のことである。この事件によって、若者たちは、秘密を共有した。警察の調べに対して、口裏を合わせたわけではなかったが、広沢が飲酒運転をしたことに、それぞれに責任があったことは闇に葬られた。

 深瀬の告白を聞いた、美穂子はいう。

 「ごめんね。わかった、っていえなくて。隠していたってことは、殺人と同じだよね」

 美穂子はだまって、深瀬の部屋をでていくのだった。

 広沢の死が事故でなかったことを、深瀬のみならず村井や谷原、浅見に対しても貼り紙や勤めている会社に投書の形で暴かれていく。彼らを追い詰めているのは、いったい誰なのか。

 ドラマの語りは、藤原竜也に委ねられている。深瀬の視点に別の方向から光を当てているのが、元警察官でフリージャーナリストの小笠原俊雄(武田鉄矢)。深瀬たちの聴取にあたった警官だった。深瀬たち4人に、真相を語ることを迫る、武田の快演はミステリーの奥行きを深くしている。

繰り返し映像化される湊かなえ文学

 湊かなえ文学は、登場人物たちの心象風景を表すような情景描写に優れていることから、映像化が繰り返されている。

 日本のミステリーの画期とされる『告白』は、松たか子主演で映画化された(中島哲也監督・2010年)。愛する娘が死んだ真相を探る、女教師が中学1年生の生徒たちを前にして告白していく。生徒役のなかに、橋本愛と「のん」の姿をみることができる。

 『白ゆき姫殺人事件』(中村義洋監督・2014年)では、主役の井上真央にからんでいく、蓮佛美沙子の演技が高く評価された。『北のカナリアたち』(阪本順治監督・2012年)では、主人公の吉永小百合の教え子役の森山未來が、観客たちの涙を誘うラストシーンを飾っている。

 今回のドラマは、さえないサラリーマンを演じる藤原竜也が、新たな演技の領域を切り拓いている。そして、圧倒的な存在感の藤原にからむ俳優陣もまた、それぞれが新しい魅力を醸し出している。

  


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