2024年4月19日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2017年5月13日

第8章 想像上のヒエラルキーと差別

「黒人は貧しいから教育を受けにくく、良い仕事に就きにくい」のだが、それを見た人々が「黒人が良い仕事に就いていないのは、彼等が遺伝的に劣っているからだ。黒人を雇うのはやめよう」と思い、悪循環に陥った。
たいていの社会的政治的ヒエラルキーは、論理的基盤や生物学的基礎を欠いており、偶然の出来事を神話(黒人は劣っている、等々)で支えて永続させたものにほかならない。歴史を学ぶ重要な理由の一つはそこにある。

 たしかに、勝者が自分に都合の良いストーリーを書いて自分の優位を正当化するのは、いつの時代でも起こることですね。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ということですね。

第9章 統一へ向かう世界

歴史は、統一に向かって執拗に進み続けている。今日、人類のほぼ全員が同一の地政学的制度(地球全体が、国際的に承認された国家に分割されている)や、同一の経済制度(資本主義)、同一の法制度(少なくとも理論上の人権と国際法の有効性)、同一の科学制度(科学的知見の統一)を持っている。
人々は、緊密に結びついており、無数の形で互いに影響を与え合っている。争う時も、同じ概念を用いて口論し、同じ武器を用いて争う。

 たしかに、1000年単位で考えると、世界はバラバラから統一に向けて歩んでいますね。100年単位で考えると行ったり来たりしているようにも見えますが。

第10章 最強の征服者、貨幣

ギブ・アンド・テイクは、見ず知らずの人との間では難しい。物々交換は不便である。そこで、貨幣が産み出された。必要だったのは、「共同主観的現実」である。「貨幣は誰でも何時でも欲しがる。それは、他の人々が誰でも何時でも欲しがるからだ。」
キリスト教徒もイスラム教徒も、貨幣に関する信頼については同意できる。宗教は特定のものを信じるように求めるが、貨幣は「他の人々が特定のものを信じている」ことを信じるように求めるからだ。

 たしかに、米国を嫌っている人は多いけれども、米ドルを嫌っている人は少ないですからね(笑)。

第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

帝国(多民族を支配し、異国民や異国領を飲み込んで消化する国)に征服された民族は、次第に固有の文化を失い、帝国の文化に染まって行った。しかし、帝国も被支配民族から多くを吸収し、混成した文明を生み出した。
「帝国は悪だ」と考える人は多いが、単純ではない。少なくとも名目上は優れた文化を広めるという目的で征服が正当化される場合も多く、そして実際に多くの被征服民族は優れた文化を吸収し、帝国の崩壊後もその文化を維持した。

 旧植民地の人が聞くと怒りそうですが、「そうした面が皆無ではない」ということは知っておく必要がありますね。もちろん、植民地政策の美化は許されることではありませんが。

新しいグローバル帝国が実現しようとしている。世界は政治的にはバラバラだが、国家は急速にその独立性を失ないつつあり、金融面での行動や環境政策、正義に関する国際基準などに従うことを余儀なくされている。

 新しいグローバル帝国と聞くと、突拍子もない印象を受けますが、そうでもないのかも知れませんね。本文には「アテネ帝国(デロス同盟)のように、征服ではなく自主的な同盟として始まった帝国もある」と記してあります。今日の世界も、似ているかも知れない、ということでしょうね。

  
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