MLBのシステム
しかし、MLBが14年に作り上げた全米の球場を網羅するビデオ判定システム「インスタント・リプレー・レビュー・システム」は、元監督が考えているよりももっと大がかりで精密なものだ。ニューヨーク・タイムズなどの記事によると、MLBは全30カ所のメジャー球場から送られてくる試合映像を確認するためのオペレーション・センターをニューヨークに建設。センター内部は各球場別のワーク・ステーションに分かれており、1球場につき約12台のカメラが異なるアングルから撮影した映像を確認できる。
このワーク・ステーションにはリプレー・ディレクターと呼ばれるビデオ判定員がいて、これも本職の審判が務めている。MLBはこのシステムを確立するのに、6〜7年の歳月と千数百万ドル(約十数億円)の費用をかけたという。ここまでやってもセーフかアウトかが判断できず、「私たちには決定的な証拠がない。よって、最初の判定を有効とする」と判定員が審判に伝えるケースもあるという。
となると、NPBがテレビ局の中継映像だけを頼りに安易にチャレンジ方式を導入したらどうなるか。2015年9月12日、甲子園での阪神−広島戦では、審判がビデオ検証したにもかかわらず、田中の明らかな本塁打が三塁打と判定されたままになった、という後味の悪い事件もある。安易なMLBの物真似は新たなトラブルの火種にもなりかねない。
もしNPBがチャレンジ方式を導入することになったら、MLB並みとは言わなくても、可能な限り正確な判定を出せるシステムを構築してもらいたい。なかなか一朝一夕には実現できないだろうが。
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