あまり大きく報道されていないが、これは今年のプロ野球の〝異変〟のひとつに数えてもいいと思う。ロッテ打線の極度な不振だ。とにかく打てない、という表現が生やさしく思えるほど打てない。
「こんなに打てないのは初めて」
4月の日程終了時点、開幕24試合でロッテのチーム打率は1割8分6厘。ちなみに、開幕22試合での1割台は1967年の南海(現ソフトバンク)以来、開幕23試合での1割台は58年の近鉄以来。このままいけば、2リーグ制以後のシーズン最低打率、62年の国鉄(現ヤクルト)の2割1厘の更新も視野に入ってくる。まさに歴史的な〝極貧打線〟だ。
同情すべき材料には事欠かない。主砲アルフレド・デスパイネが今年からソフトバンクに移籍し、その穴埋めとして補強したジミー・パラデス、マット・ダフィーがどちらも打率1割台に低迷して二軍落ち。その上、中軸打者兼選手会長・角中勝也(12年首位打者、16年最多安打)が右脇腹のケガ(右内腹斜筋損傷)、復活が期待されていた清田育宏が不調で、どちらも登録抹消となった。将棋に例えれば、「飛車角金銀落ち」である。
昨年、野球殿堂入りを果たした伊東勤監督は、「何十年も(プロ野球で)やってるけど、こんなに打てないのは初めて」と嘆いた。毎試合のようにオーダーを組み替えたり、自ら選手に打撃指導をしたりと事態の打開に必死だ。選手たちのほうも、主将の鈴木大地が音頭を取って、試合後の打撃練習を開始。千葉の本拠地ZOZOマリンスタジアムでのナイター終了後、夜11時半ごろまで打ち込みをやっている。私は伊東監督と同い年の54歳で、プロ野球取材を始めて今年で30年目になるが、こんなことをやっているチームは初めて見た。
昨年までのロッテは決して弱いチームではなかった。最後に優勝したのは05年、日本一は10年、15~16年は2年連続クライマックスシリーズ(CS)に進出し、持ち前のしぶとさを見せつけている。一時期のセ・リーグにおける広島や横浜(現DeNA)などのように、弱いから勝てるわけがない、戦力がないから仕方がない、と言われていたチームとは違うのだ。そこに、この球団が抱えた如何ともし難いジレンマがある。