──国は、レアメタルの安定確保に向けてオールジャパン体制での取り組みを打ち出しています。たとえば、世界最大量のリチウムが埋蔵されていると言われるボリビアのウユニ塩湖の権益確保を目指し、2009年からJOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を中心に、JBIC(国際協力銀行)、NEXI(日本貿易保険)、JICA(国際協力機構)、民間企業からは三菱商事や住友商事などの大企業が名を連ねています。こうしたオールジャパンの取り組みは、果たしてうまくいくのでしょうか?
中村繁夫社長(以下、中村社長):国がいくらオールジャパンを唱えても、競合関係にある民間企業同士が力を合わせていくのは、利害が対立しやすいため、現実的には難しいでしょう。また、こうやって大騒ぎすればするほど、投機筋から狙われて価格の吊り上げに遭ったり、産出国に足元を見られるリスクが出てきます。規模にもよりますが資源確保というのは「わいわいがやがや」ではなく、「ひっそり、こっそり、しっかり」やることが大事です。
本来、主体となるべきプレーヤーは?
──仰々しくやってはダメということですね。そもそもレアメタルの権益確保には、さまざまな業種のプレーヤー(JOGMEC、JBIC、商社、鉱山会社、素材メーカー、製造メーカー 等)が存在していますが、本来、主体となるべきプレーヤーは誰なのでしょうか?
中村社長:本来、主体となるべきは鉱山会社です。また、電子材料の分野で世界一の技術力を持つ素材メーカーも、今後は主要なプレーヤーと言えます。実際、これまでも自動車メーカーなどは、レアメタルの資源調達を素材メーカーに依存してきました。ただ、日本の鉱山会社や素材メーカーは、資源開発に投資するだけの経営体力を持っていないのが実態です。
なぜそうなってしまったのかといえば、日本では製造メーカーの力が強いため、資源価格が上昇してもそれを製品価格に転嫁せず、資源サプライヤーである鉱山会社や素材メーカーの利益を減らすかたちでクッションとしてきたからです。製造メーカーの繁栄は、そういった犠牲のうえに成り立ってきたとも言えます。
資源重視の欧米に比べ、日本では川下市場の技術が重視され、資源が軽視されてきました。たとえば、イギリスやフランスには王立鉱山学校があり、これは学問府の最高位として位置づけられていますから、優秀な人材が集まるわけです。日本もかつては鉱山国家でしたが、1985年のプラザ合意以降は精錬業が急速に国際競争力を失い、非鉄産業は斜陽産業の烙印を押されてしまいました。
その結果、このような産業界の縦割り構造が生まれてきたわけですが、こうした弊害を生む構造はいち早く改善し、鉱山会社や素材メーカーが新たな資源開発に投資できる仕組みを構築していく必要があると思います。
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