2024年4月20日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年6月5日

政府の非効率にも厳しい目を向けるべき

 今後は、失業対策としての公共投資は不要になります。政府が従来の発想で公共投資を行なったりしないように、国民がしっかりと監視していく必要があるでしょう。

 それだけではありません。政府には、非効率な支出が多いと言われています。地方自治体が立派なコンサートホールを建てたりするのも、「無駄」とは言いませんが、多くは民間の基準で言えば大変な非効率です。

 筆者は、これまでそうした非効率には寛容でした。「ある意味、失業対策だ」と考えていたからです。しかし、今後は違います。「コンサートホールを建設する労働者を保育園の建設に回すべき」と考えるからです。税金の無駄遣いはいけませんが、労働力の無駄遣いはさらにいけません。そういう時代認識に立って、これからは行政の非効率に厳しい目を光らせて行こうと考えています。

 筆者一人では微力ですが、そうした努力が行政を効率化し、日本経済の潜在成長率を高めることに少しでも貢献できるのであれば、それは良いことでしょう。

日本企業の過当競争が沈静化すれば、それも素晴らしいこと

 日本企業は過当競争体質ですから、価格競争もサービス競争も、やり過ぎです。価格競争は、賃金が上昇してくれば、自然に沈静化してくるでしょう。サービス競争も、そうなると思います。

 たとえば、宅配便が即日届かなくても大丈夫です。インターネットでペットボトルの水を注文したら、即日配達してくれて、不在だと再配達してくれる、などというサービスは、やりすぎです。本来ならば客が店まで買いに行き、重い荷物を持ち帰るべきです。そこまで言わなくとも、配達は3日に1度で十分です。

 これまでは、ライバル企業も労働力が豊富でしたから、サービス競争が激化していましたが、労働力不足が深刻化していけば、お互いに無い袖は振れなくなり、3日に1度の配達になるかもしれません。お互いのサービスが同時に低下すれば(過剰なサービス競争が正常化すれば)、客が逃げることもないでしょう。

 それによって、日本の宅配便業界が、従来より少ない人数で従来と同じ量の荷物が運べるようになるのであれば、それは日本経済の効率化であり、経済成長に大いに貢献する変化だと言えるでしょう。

過去のデータに頼りすぎると危険

 未来を予測する時、過去のデータを用いないのは独善ですが、過去のデータに頼り過ぎるのも危険です。バックミラーを見ながら運転するようなものだからです。「過去は来店客数が増えるたびにアルバイトを雇っていたが、これ以上アルバイトが雇えないので新しい客は断ろう」ということにはならないのです。

 氷を熱しても、しばらくは温度が上がりませんが、氷が溶け終わると突然温度が上昇しはじめます。そして、温度が100度になると、急に再び温度の上昇が止まります。経済でも、似たようなことが起きるのです。

 将来、振り返って見た時に、アベノミクスが大きな転換点であった、ということになる可能性は高いと思います。つまり、我々は今、時代の大きな転換点にいるのです。新しい時代のことを、古い時代の経験から予想することは容易ではありません。こうした時こそ、柔軟な頭で先入観に囚われず、果敢に予想していくことが必要でしょう。

 景気の予想屋のみならず、老後の資産運用を考える人、企業経営を考える人、経済政策を考える人、等々の全員が、時代の大きな転換点に立っている事を認識した上で、将来を見通そうと努める事が大切だと思います。

 こうした時の見通しは、非常に困難なので、頑張ったからと言って当たるとは限りませんが、頑張らないよりはマシでしょう。頑張りましょう。

 おまけです。筆者の好きな言葉があるので、ご紹介します。

 なぜ頑張るのか。悪い結果が出た時に、頑張った人は、運が悪かったと考えて運の神様を恨みながら一生を暮らせば良いが、頑張らなかった人は過去の頑張らなかった自分を責めながら一生を暮らすことになるから。

  
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