2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月9日

 小野寺五典・元防衛相がゴールデンウィーク中、ワシントンに出張、自民党安保調査会の提言を説明して、敵の基地に反撃を行う攻撃能力を日本が持つべきとしたことに対し、米カーネギー平和財団のジェームズ・ショフとデービッド・ソンが、5月5日付けDiplomat誌ウェブサイト掲載の論説で慎重な対応を呼びかけています。要旨は次の通りです。

ワシントンのアーリントンメモリアル橋(iStock)

 小野寺元防衛相が連休中、ワシントンに来訪し、自民党の安保調査会は次期中期防(2019-2023年)に向けて、敵国基地を攻撃する能力を戦後初めて備えるべきことも提言する旨を説明した。これが実現すれば、安倍晋三総理にとって重要な一歩になり得、また北朝鮮に対して圧力をかける手段を求めている米国の関係者にとっても朗報となる。しかし、そのようなことは、費用に見合う効果を持ち、周辺諸国との関係でも摩擦を呼ばないものであるだろうか?

 この件は、北朝鮮のことだけでなく、アジア太平洋の安全保障確保における日本の役割全体の中で考えるべきである。日米安保体制の下では、攻撃は米国、防御は日本という、役割分担が行われてきた。既に1950年代から、自衛のためなら敵地を攻撃する能力を保有することは合憲だとする政治家・官僚はいたが、政府の方針とはならなかった。しかし、今、北朝鮮のミサイルの性能が向上し、日米で開発中のミサイル防衛(MD)の能力を凌駕することが明らかとなったので、この議論が蒸し返されているのである。

 しかし、日本国内の反対派は、そのようなことをすれば周辺地域の緊張を高めるばかりか、日本の情報・偵察・監視能力では、北朝鮮のミサイル移動式発射台、固形燃料ミサイル、潜水艦発射ミサイル等に対処するには不十分で、敵基地をたたいても十分な効果は発揮できないとする。また北朝鮮のトンネル網は充実しており、その破壊に要する費用は莫大なものとなる。

 日本が攻撃能力を獲得すれば、北朝鮮以外の事案についても、米国との間の安保協力のメニューは増えるかもしれない。それは、東シナ海における抑止力を向上させることにもなるだろう。しかし、それでも、日本による外国基地攻撃能力の取得が周辺諸国に警戒心を呼び起こすこと、そして米軍が既に保有している攻撃能力とダブることを考えると、日本には別の方面に限られた資材を向けてほしい。それはMD、宇宙、サイバー、そして海上交通の安全確保である。

出典:James L. Schoff & David Song, ‘Should America Share the 'Spear' With Japan?’(Diplomat, May 5, 2017)
http://thediplomat.com/2017/05/should-america-share-the-spear-with-japan/


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