政府の無策・愚策の指摘も
カバーストーリーの中の「緊急措置的保護の副作用」の項では、政策の矛盾をついている。旅館や飲食店が営業を再開するには汚染対策の証明も含め、様々な証明書が必要になるが、前々から担当の政府部門に申請をしていたのにいつまでたっても発行してくれず、営業停止に追い込まれたという旅館の主人の話。排水の浄化対策のために小型の汚水処理設備を設け汚水を一定レベルに浄化すれば営業できると政府から聞いていたのに、結局一律に営業停止を求められ、このままではせっかく投資して新設した設備がだめになってしまうという話など。
「洱海周辺の住民の暮らしを立てる手段はずっと政策が変わるにつれて変化してきた。数十年前、この辺りの人の多くは農業と漁業に頼っており、のちに都市化が進むにつれて少なからぬ村民が建設業に身を投じ、左官や塗装工になった。(中略)洱海のすぐ西側の才村では建設業に携わる村民は80%以上を占めるが、今彼らは新たに生計を立てるための技能を学ばなければならないという窮状に陥っている」としている。
伝統的に洱海で続けられてきた鵜飼まで禁止されたことを報じ、一律に規制を適用する政府のやり方に疑問を呈するのは、新興のメディア「北京時間」だ。「北京時間」は2016年にアンチウイルスソフトの開発会社「奇虎360」(本社北京市)と北京新メディアグループが共同出資して立ち上げたもの。5月18日に「洱海の汚染対策は『史上最も厳しい』 70%の旅館が閉まり、無形文化財の鵜飼が消える」という記事を掲載した。
100年以上の伝統を持ち、雲南省の無形文化遺産に登録されている鵜飼まで禁止され、鵜の数を減らして飼育は続けているものの、鵜を2年も水に入れることができていないという飼育者の話を紹介している。
政府が環境保護政策に反する措置をとっていたとも指摘している。「大理の経済発展と環境政策について整理していて、養殖を禁じ、エンジン付きの船を禁じ、農地を湖に返し、いけすを原状回復し、工業企業を移転させるなど多くの環境保護政策をとると同時に、『海東地区』を開発していたことが分かった」と伝える。
海東地区の開発は03年に提起され、11年には建設をスピードアップ、上海の浦東になぞらえ「大理の浦東地区」を建設すると公言していた。専門家から環境への配慮が必要との指摘もあったが、七大行動の開始まで見直しはなかったという。
保護政策の不行き届きについては、幹部が責任を問われる事態にもなっている。新華社と並ぶ通信社の中国新聞社の「中国新聞網」は5月24日、22人の幹部が責任を問われていると報じた。「大理は洱海の保護事業の推進に尽力しなかった幹部22人の責任を問うている。(中略)幹部7人を立件し調べている」
「空前の厳格さ」とされる保護活動は、政府による壮大な社会実験ともいえる。経済発展の追求と環境保護、人々の権利意識の高まりという三つの課題に、同時に対処しなければならないからだ。洱海の保護活動に大揺れの大理は、現代中国の縮図だといえる。
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