海野素央の Love Trumps Hate

2017年7月11日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

数字のウソ

 トランプ大統領のツイッターには、数字のウソも含まれています。例を挙げてみましょう。1月23日、同大統領は16年米大統領選挙について「300万人から500万人の不法移民のせいで票を失った」と投稿しています。ライバルであった民主党のヒラリー・クリントン元国務長官は、選挙人獲得数で敗れました。ところが、クリントン元長官は得票数において同大統領よりも約290万票以上も獲得しています。それで同大統領は300万人という数字を思いついたのでしょう。同大統領の主張にもかかわらず、不法移民による投票を裏付ける決定的な証拠はありません。

 それに加えて、明白なウソもあります。2月16日、トランプ大統領は「選挙人を306人も獲得した。ロナルド・レーガン大統領以来の大勝利だろう」と書き込んでいます。08年米大統領選挙でオバマ氏は選挙人365人、12年は332人をそれぞれ獲得しています。

危険な「ウソ」とリスク

 トランプ大統領は、支持者固めのためにツイッターでウソをついているとみて間違いないでしょう。100個のウソの中には、ロシアゲート疑惑に関する危険な「ウソ」も潜んでいます。

 5月12日、同大統領は「民主党は選挙に負けた言い訳のため、ロシアとトランプ陣営が共謀したとの話をでっちあげたのだ」と投稿しています。それに対してニューヨーク・タイムズ紙は、米連邦捜査局(FBI)は選挙前にすでに共謀の疑いで捜査を行っていたと述べ、同大統領のコメントを否定しウソと断定しています。

 ロバート・モラー特別検察官は、ロシア政府とトランプ陣営の共謀疑惑について現在捜査中です。仮に共謀が立証された場合、トランプ氏は外国政府と協力して大統領の座を射止めたことになります。しかも、その外国政府とは与党共和党内に不信感があるロシア政府です。共謀に関する確たる証拠が見つかった場合、同氏の「でっちあげ」の主張は覆され、信頼回復が困難になる危険性を含んでいます。 

 これに加えて、トランプ大統領のツイッターが乗っ取られるリスクも存在しています。ハッカーが大統領になりすまして、「中国にはもう期待できない。北朝鮮に軍事的行使をすることに決めた。米国は勝つ!」という内容がツイッターに投稿されたら、世界中に衝撃が走り大混乱を起こします。ツイッターを多用するのは「大統領らしくない」という批判に対して、同大統領は「現代的な大統領だ」と強気の投稿をしており、リスクが高いことを認識していないと言わざるを得ません。

 今後もトランプ大統領は、手柄、オバマ前大統領、メディア及び数字に関するウソを用いてツイッターに投稿し続けるでしょう。同大統領のメッセージの受信者が、それらのウソに慣れて無感覚になり受容してしまうことが最も危険であると言えます。

  
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