ビジネススキルを活かして楽しむ脱力系子育てのススメ

2017年7月19日

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小川大介 (おがわ・だいすけ)

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大学受験予備校、大手進学塾で受験国語の看板講師として活躍。難関中学、国公立大学医学部などへ多数の合格者を送り出す。2000年、さらなる学習指導の理想を追求し、中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1を設立。教科指導スキルに、声かけメソッド、逆算思考、習慣化指導を組み合わせ、短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。著書に『小川式[声かけ]メソッド』(宝島社)、『中学受験 基本のキ!』(共著:日経BP社)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『論理力は小学6年間の国語で強くなる』(かんき出版)など。今年10歳になる男の子の父。

現状維持欲求という厚い壁

 しかし、この域に達することはそう簡単ではありません。

 なぜなら人には、「現状を維持したい」という潜在的な欲求も強く働くからです。

 今のままでいたい、変わりたくない、新しいことに取り組みたくない、という欲求です。

 簡単に言うと、「成長したくない」という気持ちです。

「いつまでも子どものままでいたい」
「約束の時間だけれど、なんだか動きたくないなぁ」
「やればいいのは分かってるんだけど、気が乗らないんだよな」

 といったこと、ありませんか?

 私はよくあります。ぐずぐずしていることが、なんだか幸せな気がしてくることすらあります。

 現状維持欲求、おそるべしです。

 マズローの考え通りなら欲求が段階的に満たされれば、成長する意欲も湧いてきそうなものですが、今のまま変わりたくないという潜在意識の方が強くはたらけば、立ち止まってしまうのです。

 そんな時は、自分を承認してもらっても体のスイッチが入りません。

 「小川さんは、ご自身のタイミングがお分かりだから大丈夫ですよ」などと言ってもらっても、(大丈夫というか、もうちょっとこのままでいたいな~)と動き出せる気配をわれながら感じません。

 むしろ、「小川先生! 何しているの! 時間でしょ!!!」とピシっと言われた方が、「はい! 動きます!」とすぐに行動に移せます。

 こういう時は、叱ってもらえることがありがたいですね。嬉しくなることすらあります。

 でも、同じような時でも、

 「グズグズしているの鬱陶しいなぁ! 早くやりなさいよ!」と言われたら、どうでしょう。

 私ならきっと動き出せません。嫌な気分になるか、腹が立つか、聞こえなかったふりをするかのどれかですが、とにかく動きません。動く気が絶対に起きません。

 その人は怒っているだけだからです。

叱るとは褒めること

 叱る時、気持ちは相手に向けられています。

 相手の持つ力を信じて、その力を発揮するよう背中を押すのが「叱る」です。

 怒る時、気持ちは自分に向かっています。

 自分の不快な気持ちを吐き出して、すっきりしたいだけなのが「怒る」です。

 大切なことなのでぜひ覚えておいて欲しいのですが、「叱る心の根っこと、褒める心の根っこはつながっている」のです。

 「国語」の授業では、「叱る」と「褒める」は「反対語」です。しかし、子どもや部下を育てる心の使い方では、叱ると褒めるは同義語なのです。

 「あなたならできる」と信じてくれていることが伝わるから、叱られることで、今のままでいたいという気持ちを振り切って行動に移せるのです。

 ですから、人を叱るには、その人に向けて十分に心が向かっていなければなりません。

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