オーストラリアも、昔の日本と同じように官僚主導の国であったが、この改革により大きく変わった。省庁の割拠主義は是正され、政治主導が確立された。日本で言えば、内閣官房や内閣府で省庁の利害にとらわれず、政権のために改革を行った者が省庁の局長や次官に登用されるようになったからである。日本でも内閣官房などに省庁からの出向者がいるが、彼らは出身省庁を見て仕事をしており、政権のために汗を流すとは限らない。
オーストラリアの公務員は、より専門性が重視されるようになり、先述した規制改革のように、まさにエビデンスに基づく検討が行われている。もちろん、最後は政治的判断となるが、そこに至るまでは客観的な分析に基づく検討が行われており、最初から専門的な分析が乏しく政治的なバイアスがかかっている日本とは大きな差がある。
安倍総理が加計学園から利益を受けて便宜を図ったとは思えないが、今回の混乱は誤った政治主導の結果であり、政策立案過程を劣化させた責任は大きい。もとより、公務員制度の根本は政治の問題である。客観的なデータに基づく専門的な検討が疎かになれば、間違った政策が導入され、その結果は国民が負うことになる。
Wedge8月号ではこの記事の他にも、レポート「『加計学園問題』が浮き彫りにした規制改革への課題」と題して、岩盤規制を生み出す構造的問題や規制改革の難しさについてレポートしています。
・八代尚宏(昭和女子大学グローバルビジネス学部長)「1つでも改革できれば全国展開 国家戦略特区と岩盤規制の闘い」
・駒崎弘樹インタビュー「正しければ規制は変わる 民間は諦めず特区の活用を」
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