2024年11月22日(金)

No Science, No Business

2010年9月4日

ガソリン車とは違い、家庭での充電が可能

 そこで日産は、グローバル・データ・センターを作って、リーフからの情報をリアルタイムで集め、様々なサービスを行う予定だ。

 たとえば、このセンターに携帯などから指示を送ることで、乗車前に自宅のコンセントからの電力でエアコンをオンにして、バッテリーを節約すること もできる。

 まだ、詳細はまだ決まっているわけではないが、カーナビと連動して、今の運転状況である範囲から出る場合は、この場所にある充電ステーションで充 電した方が良いという案内を行ったり、バッテリーを長持ちさせるにはどう運用したらいいかといった、情報提供なども考えているようだ。

 自動車からのデータを様々な形で得ることで、顧客には電気自動車のより便利な使い方を提供できるだろうし、そのデータはより高性能の電気自動車の 設計にもつながるだろう。

 日産は住友商事とともに、将来の中古車から出てくるバッテリーの再利用についても検討を始めているが、最も高価な部品であるバッテリーを如何に劣 化させないかが、下取り価格に反映するという事もあるに違いない。

 こうしてみると、リーフは、現状の電気自動車の宿命として内燃自動車に見劣りする可能性のある部分を極力排除し、電気自動車ならではのメリットを 強く押し出せるように設計された車といえる。リーフがどの程度成功するかが、これからの電気自動車の普及の道筋を左右する事は間違いないだろう。

 とはいえ、電気自動車が、これから順調に普及していくかどうかはわからない。数年という短期に限って言えば、紆余曲折がある可能性のほうが高いだ ろう。なんといっても、内燃車が圧倒的なこの世界で、新参の電気自動車が独自の地位を築いていくことは、容易ではないからだ。

 これは、このところブームになっている書籍の電子化とも似たところがある。電子書籍はキンドルやiPADの登場で国内でも話題になってはいるけれ ど、様々な利害対立や思惑があるうえに、電子書籍とはどういうものであるべきかというイメージも、実際には固まっていない。そのため、今回のブームが、結 局は挫折に終わるという可能性もありうる。

 ただ、数十年という時間を考えると、文章の多くが電子データ化されていくのは、技術の必然といっていい。同じように、20年、30年といった長期 的にみれば、電気自動車が世界の産業の大きな部分を占めるようになることは疑いの余地がない。

電気自動車は、インフラの一部へ

 電気自動車の将来を占う上で、重要なキーワードとされているのが、スマート・グリッドだ。今後、家庭用の太陽電池などの設置が進み、そこからの売 電の割合が増えてくると、発電所から供給される電力と、家庭からの電力の交通整理が重要になってくる。これを行うのがスマートグリッドだが、そこに電気自 動車を組み込むアイデアがある。

 太陽電池で発電される電力は、少し曇っただけでも発電量が減って出力が一定しないうえに、夜間は発電できない。こういう変動を吸収するためのバッ テリーとして、電気自動車を使うわけだ。もともと自動車は四六時中走っているわけではないし、トータルにみれば停車している時間のほうがはるかに長い。だ から、これを活用しない手はない。

 これは、電気自動車が、もはや自動車とは違った役割を持った、別のものに変化していくということだ。乗り物であるとともに、家の設備の一部であ り、町全体の送電網の一翼を担う、新しいテクノロジーへと進化する。

 こうなってくると、まだインフラが未成熟な発展途上国などへ、太陽電池パネルや風力発電を組み合わせた送電システムと電気自動車をセットで売り込 んでいくということさえ考えられるだろう……。

 少々夢を広げすぎと思われるかも知れないけれど、電気自動車には確かに世界を変革する可能性が秘められている。

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