Wedge REPORT

2017年8月23日

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秋元千明 (あきもと・ちあき)

英国王立防衛安全保障研究所日本特別代表

早稲田大学卒業後、NHK入局。30年以上にわたり軍事・安全保障専門の国際記者、解説委員を務める。2012年から現職。著書に『アジア震撼』(NTT出版)、『戦略の地政学──ランドパワーVSシーパワー』(ウェッジ)など多数。

「太平洋の要石」と呼ばれた沖縄

 それでは、東アジアの中で沖縄はどのような位置にあるのだろうか。

 沖縄の那覇から台北までの距離は620キロ、台湾海峡まで750キロと、沖縄本島は日本本土よりはるかに台湾に近い。また、北京まで1860キロ、中国海軍の北海艦隊の司令部がある青島まで1300キロ、中国の特別行政区である香港まで1430キロである。

 一方、朝鮮半島までの距離は、北朝鮮のピョンヤンまで1440キロ、韓国のソウルまで1260キロの距離にある。

 つまり、沖縄は、日本の安全保障上の脅威になるそれぞれの地域とほぼ等距離の位置にあり、台湾海峡に非常に近いことが指摘できる。将来、危機が予想される地域に対して、近過ぎず遠過ぎず、ほどよい距離に沖縄は位置しており、そこに緊急展開部隊である海兵隊を配備していれば、有事の際、迅速に危機に対処することが可能になるのである。太平洋戦争の際、沖縄が「太平洋の要石(かなめいし)」と呼ばれたのはこのためである。

 また、沖縄の位置を地球規模で眺めてみよう。世界のいくつかの場所を中心に半径1万キロの円を描いてみる。地球は球体なので、平面の地図に同心円を描くと、波打つように表される部分がその範囲となる。すると、1カ所だけ、世界中のほとんどの地域をすっぽりと覆ってしまう都市がある。それはロンドンであり、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸の全域と南米の北半分がその範囲に収まる。かつての大航海時代、英国が7つの海を支配できたのは、英国が世界各地へアクセスしやすい場所に位置していたことと無関係ではない。

 そして、ロンドンの次に、同じ同心円で世界の主要な地域を覆うことができる場所は、実は沖縄である。那覇を中心とする半径1万キロの範囲には、ユーラシア大陸のほぼ全域、オセアニア、アフリカの東半分、北米の西半分が含まれ、これほど世界各地へのアクセスが容易な地域は太平洋には他にない。

写真を拡大 出所:ウェッジ作成

 一方、戦略拠点として知られる、インド洋のディエゴ・ガルシアは、確かにユーラシア大陸のほぼ全域とオセアニアを完全にカバーするが、北米、南米は範囲に含まれない。つまり、アジアと欧州、中東、アフリカをにらむ戦略拠点であることが容易に理解できる。

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