2024年4月16日(火)

ベストセラーで読むアメリカ

2017年8月24日

医療保険制度や教育制度の改革にも取り組む 

 内容が真面目であると同時に、とにかく読んでいて笑えるから売れるのも当然かもしれない。最も滑稽なのは、人を笑わせる商売をしてきた筆者が、ワシントン政界に入ったために、面白いことを極力言わないように苦労する様子だ。初めて上院選に立候補した際も、コメディアンとしての過去の著作やジョークを材料に、政治家として不適切だと、ライバルの共和党陣営から攻撃を受けた話も笑える。

 議事堂にいるときはまじめにしていても、本を書くときはユーモアセンスを全開している。政治家がよく使う言葉や言い回しを取り上げ、からかう一節にも思わず爆笑してしまった。例えば、What gets me out of bed in the morningという政治家のお決まりの文句にもかみつく。“What gets me out of bed in the morning is making sure our veterans have good jobs,”「軍を引退した人たちがちゃんとした仕事に就けているか心配で朝、眼が覚める」といった言い回しを議員たちはよく使う。これに対し、本書では次のように記す。

 What gets me out of bed in the morning is having to pee. Sometimes that’s also what gets me out of bed in the middle of the night. In either case, I always go right back to bed. The next thing that gets me out of bed in the morning is Franni saying, “It’s morning and it’s time to get out of bed.”

 「私はおしっこがしたくて朝、眼が覚める。時には、そのおかげで真夜中に眼が覚めることもある。どっちにしろ、私はいつもすぐベッドに戻り眠る。その次に朝、目を覚ますのは、妻のフラニーから『朝よ、起きる時間よ』と、言われるときだ」

 議員になって2週目に初めて支援者に誕生日のお祝いのカードを書いたとき、スタッフに止められたエピソードも面白い。110歳になる高齢女性あてのカードに、You have a bright future.「あなたの未来は輝かしい」とジョークで書いて、自分のスタッフに止められた。国家安全保障に関する極秘の会議で、軽いジョークを飛ばしたら思いのほかうけて爆笑を呼び話題になった一件など、枚挙に暇がない。特に、共和党議員をからかう文章はさえている。

 筆者のフランケンは元お笑い芸人とはいっても、政治風刺を得意とした。2004年には自らラジオ放送でトーク番組を始め、さまざまな社会問題を取り上げてきた。アメリカではテレビでもラジオでも、こうしたトーク番組が人気で、特に保守派の著名なコメンテーターたちが大きな影響力を持つ。本書はこうした保守派の識者たちを嘘つきだと一刀両断する。自らラジオでトーク番組を始めたのも、保守派のデマゴーグに対抗する狙いがあったという。そういう素地があるからこそ、フランケンは医療保険制度や教育制度の改革にも取り組み、本書でも鋭い指摘を連発する。

 According to the most recent data when my campaign began, there were 46.6 million Americans living without health insurance, including 21.5 million who worked full-time and, worst of all, 8.3 million children. And on my radio show, I talked about this issue all the time with guests like Elizabeth Warren, who told me that half of all bankruptcies in America were tied to a medical problem.

 「私が選挙キャンペーンを始めた当時の最新データによると、4660万人のアメリカ人が医療保険に入らないまま暮らしていた。そのうち、2150万人は正社員として働いていたうえ、最悪なのは、830万人はこどもだった。私はそこで、自分のラジオ番組で、この問題についていつも、エリザベス・ウォーレンのようなゲストを招き議論した。彼女によれば、アメリカの個人破産の半分は医療費の問題が絡んでいるという」

 (訳注・エリザベス・ウォーレンはマサチューセッツ州選出の上院議員で民主党所属。法学部の教授も務めたことがある論客で消費者保護などに積極的だ)


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