2024年12月4日(水)

ベストセラーで読むアメリカ

2017年2月9日

■今回の一冊■
ALL THE GALLANT MEN
筆者 Donald Stratton
出版社 William Morrow

 安倍晋三首相が昨年暮れ、真珠湾(パール・ハーバー)を訪問した。ちょうどそのころアメリカでベストセラーリストに顔を出していたのが本書だ。日本軍による真珠湾攻撃で最も多くの犠牲者が出た戦艦アリゾナの乗組員のうち、現在でも存命する数少ない元アメリカ兵の一人による回想録だ。ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリスト(ノンフィクション単行本部門)に昨年12月11日付で16位で初登場した後、12月25日付、今年1月1日付と連続して8位にランクインした。

「喧嘩のルールを、日本人はすべて破った」

『ALL THE GALLANT MEN』(Donald Stratton,William Morrow)

 日本軍による奇襲で撃沈した戦艦アリゾナは今でも真珠湾の海底に沈んでいる。犠牲者を追悼するため、その真上に設けたのがアリゾナ記念館だ。安倍首相はアリゾナ記念館を訪れ献花もした。本書によると、1941年12月の真珠湾攻撃で亡くなった米兵は合わせて2403人で、そのうち戦艦アリゾナの乗員だけで1177人が命を落とした。戦艦アリゾナの乗員で真珠湾攻撃を生き延びたのは335人で、今でも存命はわずか5人だけだという。当時、19歳だった筆者がその5人のうちの一人というわけだ。

 筆者はからだ中に火傷をおったものの一命をとりとめ、苦しいリハビリを経て、なんと再び1944年に海軍に入隊し、太平洋戦争の終結間近の沖縄戦にも従軍した。まさに、不幸な日米戦の始まりと、実質的な最終局面に居合わせたことになる。古い世代のアメリカ人がいったい、真珠湾攻撃をどう受け止め、日本に対してどのような感情を持っているのかを知るうえで、本書はとても参考になるはずだ。安倍首相が真珠湾を訪問した際の演説で強調した「和解の力」が、どこまでアメリカ人の心に響くのか見極める助けにもなりそうだ。

 真珠湾攻撃を生き延びた筆者は当然ながら、真珠湾攻撃は宣戦布告をせずに強行された卑劣な奇襲と批判的に評価する。


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