■今回の一冊■
AL FRANKEN, GIANT OF THE SENATE
筆者 Al Franken
出版社 Twelve
筆者のアル・フランケンはアメリカ・ミネソタ州選出の上院議員だ。2009年に議員になるまではテレビの人気番組などで活躍したお笑い芸人だった。そんな異色のコメディアンいや政治家が書いた回想録が面白くないはずがない。『アル・フランケン、上院の巨匠』という本書のタイトルからして冗談である。いくどか爆笑してしまうくらい書きぶりも面白い。例えば、次のような調子だ。
Watching Donald J. Trump take the oath of office to become the 45th president of the United States was perhaps the most depressing moment I’ve had since I entered politics, although that record has been repeatedly surpassed since January 20.
「ドナルド・トランプが第45代アメリカ合衆国大統領に就任するため宣誓するのを見たのは、おそらく私が政界に入って以降で最悪の瞬間だった。しかし、(トランプ大統領が就任した)1月20日以降、その最悪の記録はたびたび破られている」
笑いに裏打ちされた反トランプ・反共和党のメッセージ
筆者アル・フランケンは土曜の深夜に生放送するNBCテレビの公開バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で、番組が始まった1970年代から放送作家やコメディアンとして活躍した。リベラルな視点から政治を批判するコントで笑いをとった。本書でもジョークを交えながらも辛らつな言葉で、ライバル政党である共和党の議員たちを論評する。筆者の基本的なスタンスは反共和党であり反トランプだ。筆者は次のように訴える。
And while we don’t yet know exactly how bad things are going to get under President Trump, I think we should probably be prepared for the worst.
「そして、トランプ大統領のもと一体どんな悪い事態が起きるか分からないのだから、おそらく最悪に備えるべきだと思う」
さらに、トランプ大統領への対決姿勢をみせる。
I’m going to keep fighting as hard as I can in the coming months and years to protect our children, our values, and our future from Donald Trump.
「ドナルド・トランプから、私たちの子どもたち、私たちの尊厳、私たちの未来を守るため、これからの数カ月あるいは数年にわたり、私は精いっぱい戦い続ける」
ジョークが多い一方、本書はアメリカの医療保険制度などまじめな問題も取り上げ改革の必要性を訴える。そして、トランプ大統領のもとリベラル派や民主党の支持者ひとりひとりがワシントン政界に対し声を上げ闘い続けることの大切さを説く。笑いに裏打ちされた反トランプ・反共和党のメッセージが共感を呼び本書は売れている。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト(単行本ノンフィクション部門)の週間ランキングに6月18日付で、トップで初登場した後も上位にランクインを続けている。10週連続での登場となった8月20日付ランキングでは再び首位の座を獲得し、翌8月27日付でも2位をキープした。