■今回の一冊■
THREE DAYS IN JANUARY
筆者 Bret Baier
出版社 HarperCollins
アメリカのトランプ大統領の傍若無人ぶりが止まらない。その裏で、トランプ大統領とは似ても似つかない大統領だったアイゼンハワーの人気が再燃している。アイゼンハワー大統領の功績を振り返る本書は、ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリスト(単行本ノンフィクション部門)に1月29日付で初登場して2位につけ、その後も上位に入り続け直近の3月12日付でも11位だ。
日本でも最近、アイゼンハワーの名前がマスコミで少し出た場面があった。日本の安倍晋三首相がトランプ大統領とゴルフを一緒にプレーした時だ。日本とアメリカの両首脳がゴルフをするのは、60年前に安倍首相の祖父である岸信介首相とアイゼンハワー大統領がプレーして以来と話題になった。
アイゼンハワーもトランプと同じようにゴルフ好きだ。しかし、両者の共通点はそれだけで、アイゼンハワーがいかに偉大な大統領だったか本書を読むと分かる。本書はアイゼンハワーが2期8年の任期を満了し1961年1月に退任する最後の3日に焦点をあてるノンフィクションだ。こう説明すると本書のタイトル「1月の3日間」の意味するところが分かるだろう。
原爆投下計画を知り、トルーマンに反対も
Ike(アイク)という愛称でも親しまれたアイゼンハワー大統領は、退任間際の最後の演説でアメリカ国民に何を伝えたのか。そして、次期大統領のケネディへの引継ぎの打ち合わせにも細心の注意を払い、新任の大統領が国を誤った方向に導かないよう苦心した様子を描く。当然ながら、2017年1月の大統領交代にタイミングをあわせ刊行した本書は、トランプ大統領の政治家としての未熟さを浮き彫りにする。同時に、アイゼンハワーの偉大さを改めて痛感させる。
アイゼンハワーは第二次世界大戦で西ヨーロッパ連合軍最高司令官を務め、連合軍によるノルマンディー上陸作戦を成功に導いた軍人だ。アメリカ国民だけでなく世界の英雄だった。アイゼンハワーが偉大な大統領として尊敬されていることは、昨年8月の本コラム「トランプ現象へのアンチテーゼ?」でも触れている。