2022年10月7日(金)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年9月21日

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●そんなに漢字の意味に対して反応があるものなんですか。

——無意識な処理を見たいので、被験者には意味を意識させないような工夫はしています。「幸」の色が変わったらボタンを押してくださいと言ってからやってもらうと、被験者は「幸」と「害」の違いについては意識していないですよね。文字の色だけに関心がいくから。課題は赤い字が出たらボタンを押す実験。なのに、文字の違いによって人の反応は敏感に変わってくる。情動に関する文字に人は非常に敏感に反応する。

 こうした実験で、情動に関する言葉の相対的な関係がわかるはずです。感受性には個人差があるでしょうが、感情が心の中でどういう現れ方をするのかが見えてくるのではないかと思っています。

 それから、音楽と情動の関連というのも興味深いテーマ。短調と長調の音楽を聞いて、人がどのように感じるかの研究も進めています。人がそのとき聞きたい曲を聞けるようなしくみはできないものかと。たとえば、人が陶酔しやすい音楽とはどういうものなのか。会場全体の雰囲気で人の情動が同期する様子も測定してみたい。音楽演奏と情動とのフィードバックをつくるということです。

●情動も、言葉のように心を構成する要素ですね。

――私は、心は言葉が作るものだと思っていましたが、心は原始的な感情でできていて、言葉はそれに理屈付けをしているに過ぎない。意識を理解するには、言葉だけでは足りないと感じたんです。

 私が本当に知りたいと思っているのは心の問題。自分の意識がどうやって できているのか。小さな頃から持ち続けた疑問の答えにたどり着きたいですね。 

岡ノ谷一夫〔おかのや・かずお〕
理化学研究所脳科学総合研究センター生物言語研究チームリーダー、科学技術振興機構ERATO岡ノ谷情動情報プロジェクト研究総括、東京大学大学院総合文 化研究科教授。著書に『小 鳥の歌からヒトの言葉へ』『ハ ダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係』(岩波科学ライブラリー)、『こ とばの宇宙への旅立ち 3』(大津由紀雄編、共著、ひつじ書房)、『言 葉はなぜ生まれたのか』(文藝春秋)など。
ラボウェブサイト:http://okanoyalab.brain.riken.jp/pub/jp/

◆WEDGE2010 年10月号より

 

 

 

 
 

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