2024年4月26日(金)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年9月21日

 

●たとえばブログ「炎上」なんて、サイト上で真意や感情がうまく伝わらないときに起こりますね。

――インターネット普及の問題のひとつは、情動情報が文字にのらないことです。人は文面から相手の情動を推測し、同じ文面でも違った推測をしてしまう。内容は伝わっても、それに伴う情動は往々にして間違って伝わる。一生懸命書いたメールの返信が一言だけだと、「怒ってるのかな?」なんて心配しちゃうことがありませんか? 裏を返せば、言葉は嘘がつけますが、情動は嘘がつけない。

 情動情報が間違って伝わらないように、私は自分の研究でなんらかの方向付けをしたいんです。これだけ普及を見せたインターネットがない世界というのはもう想像できませんから、ネットがあるという前提で、情動のすれ違いをどれだけ減らすことができるのかという問題意識は重要だと思っています。

 つまり、遠くの人にも対面時と同じような情動情報を伝えるために、情動情報を抽出して伝えるやり方を考えています。たとえば、端末で顔や声を情報処理して正直な情動情報を伝えたいんですね。

●ブログや掲示板だと匿名でやりとりできるというのも問題だと思うんですが。

——顔が見えているときと見えていないときで感情表現は変わります。顔だけでなく、声もそうです。直接聞こえているときとそうでないときでは絶対に違う。寂しいことではありますが、匿名性があることでネガティブな表現が増えると思います。匿名サイトの書き込みなどはそうでしょう?

 だから、端末で顔や声を情報処理して正直な情動情報を伝えるということをやりたい。個人情報の問題も避けられませんから、端末をとおしてコミュニケーションするときに情動を伝えるかどうかを選択する、という仕組みも必要かもしれませんね。クレジットカードの認証のようなイメージです。

 テキスト処理だけでできることもあると思います。たとえば、ある文章を書いたときに、こんな情動解釈が可能だということを書いた人に教えてあげるという仕組みを作るとか。情動が間違って伝わらないための、エディタにつける補助的な機能ですね。実際に作るのは大変かもしれませんが。


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