2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月18日

 台湾の行政院長交代について、台北タイムズは、林前行政院長の失敗を総括しつつ頼新行政院長に期待するとともに、蔡英文総統により攻撃的な対中政策をとるよう注文を付ける社説を9月12日付で掲載しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/daikokuebisu/alexkava/Cartarium/Zoonar RF)

 林全行政院長は就任15か月にして、任務をやり終えたとして辞表を提出、後任には頼清徳・前台南市長が任命された。

 林が就任以来遂行してきたいくつかの改革は称賛に値するが、内閣の仕事ぶりは全体としては満足いくものではなく、支持率は低迷し内閣改造がしばしば求められてきた。

 林の指導の下、行政院は、産業イノベーション計画、「将来を見据えたインフラ建設計画」、税制改革を提案、エネルギー転換、週5日労働、長期的介護、子供ケア、食糧の安全、大気汚染、公営住宅政策などにも取り組んだ。蔡英文が進める年金改革、司法改革に協力したことも称賛に値する。

 しかし、林が大衆の支持を集められなかったことは間違いない。林は、古い泛藍陣営(国民党系)の人物を閣僚に任命したとして強く非難された。それは泛緑陣営(独立派)の支持者たちには賛成しがたいことであった。

 林氏の「古い」内閣は、新鮮で積極的なアプローチに欠け、泛藍陣営出身の閣僚は「台湾人意識」に欠け官僚的ルーチンにとらわれていた。

 多くの閣僚はテクノクラートで、知識に比べて実行力と問題解決能力が劣っていた。象牙の塔に閉じこもり続け、公僕としての謙虚さをもって行動できず、政策決定を大衆に伝える能力に欠けていた。

 もう一つの欠点は、調整力の欠如である。こうした部門主義は排除されなければならない。

 政策や人事でも論争を呼ぶものがあった。週5日労働の実施では硬直化した「一例一休」(注:「例」は原則として出勤禁止、「休」は通常の休日)の制度を導入し、経済を損ね、多くの不満を引き起こし、内閣に打撃を与えた。また、「金融ギャング」による金融部門の支配を許した。

 国民は頼氏に高い期待をしている。世論に耳を傾け、人事と行政上の欠陥を改めるならば、新内閣の支持率は上昇しよう。

 新内閣は、高い期待を生かして、結果を出すことに焦点を当てるべきだ。頼にとり、責任は重く道は長い。各方面から有能な人材を登用し、適所に配することが重要だ。

 新内閣は学者や専門家だけでなく、産業界出身者や政治的経験を持った者を含むべきである。金融・経済閣僚は、現実的でない政策を避けつつ、主要任務である経済刺激に集中すべきだ。

 頼は、新たな政治状況が展開して混乱することを避けるべく、民進党の派閥にも注意を払わなければならない。

 林は、国防・外交関連の任命には責任がないので、内閣支持率の低迷の責任を同氏だけに帰するべきではない。蔡は昨年就任して以来、対中政策のボトムラインを守ってきたが、攻撃性に欠けていた。国民党政権は中国に気に入られるように振る舞って国民を辟易させたが、蔡政権も中国に対して攻勢に出ようとしないことで失望を招いている。

 新行政院長、新内閣とともに、蔡英文も人事において新しい思考とアプローチを採用すべきだ。

 行政院長の交代で、新たな段階が始まった。政権は、国民の期待に応える努力をしなければならない。

出典:‘New Cabinet offers a new chance’(Taipei Times, September 12, 2017)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2017/09/12/2003678271


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