2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年9月4日

中国人民解放軍建軍記念日に合わせて、内モンゴル自治区でパレードが行なわれた(詳細は後述。写真:新華社/アフロ)

 2017年8月24日、中国海軍H-6M/G型爆撃機6機が、沖縄本島と宮古島の間の公海上空を通過した後、日本列島に沿う形で太平洋を北東に飛行した。H-6K爆撃機の編隊は、紀伊半島沖まで進んだ後、反転して同じルートで東シナ海に戻った。航空自衛隊がこれにスクランブルで対応している。

 領空侵犯など、国際法上の問題があったという事実は確認されていないが、小野寺防衛相は、外交ルートを通じて日本としての関心表明を行った。抗議を行なった訳ではないものの、日本領空に近いこのルートで中国軍機が飛行したのは初めてであったため、防衛省は「特異な飛行」と認識したのだ。

 中国軍機が紀伊半島沖まで飛行したのは初めてであるが、中国海軍はすでにその行動範囲を、第一列島線を越えて西太平洋に拡大している。最近では、艦艇だけではなく航空機もその行動範囲を広げているということだ。さらに、海軍が行動する海域も、西太平洋だけでなく、日本海にも及んでいる。

 2017年1月9日、中国海軍H-6M/G 型爆撃機6機が対馬海峡を通過して日本海に入ったのだ。Y-8電子偵察機1機、Y-9最新型電子偵察機1機も同時に飛行している。航空自衛隊は、F-15にスクランブルを命じ、E-767型AWACSとともに、この飛行を監視させた。しかし、スクランブルをかけたのは日本だけではなかった。韓国である。

 中国軍機の編隊は、日本の防空識別圏に進入した同じ日に、韓国の防空識別圏にも進入したのだ。韓国は、F-15K及びKF-16戦闘機を緊急発進させ監視している。韓国空軍は、中国爆撃機及び早期警戒機群に対して音声による警告を行った。

 日本を取り巻くように飛行を繰り返す中国海軍爆撃機は、単に日本に対して軍事力を振りかざして威嚇しただけではなく、中国と領土問題を抱える韓国の危機感を高める結果を招いた。中国海軍の行動範囲の拡大及び活動の活発化は、日本だけでなく北東アジア地域全体に影響を及ぼしている。

中国海軍の軍事演習の目的

 中国が海軍の行動範囲を拡大するという方針は、すでに1980年代半ばに指示されている。中国海軍の艦艇は、鄧小平氏及び中国海軍の父と呼ばれる劉華清氏の指示に従って、2009年から第一列島線を越えて活動し始め、呉勝利海軍司令員(当時)は、「遠洋訓練の常態化」を公言した。

 劉華清氏は鄧小平氏に直接乞われて、1983年、海軍司令員に就任している。その鄧小平氏は、太平洋において米国に伍して発言権を得なければならないと指示していた。中国の軍事力増強と行動範囲の拡大は、米国を意識して行われてきたということだ。中国が、米国を意識して行ったと考えられる軍事行動は他にも見られる。

 2017年7月30日に、習近平党中央委員会装飾・中央軍事委員会主席は、八一記念日(中国人民解放軍建軍記念日)に合わせて、内モンゴルの演習基地で軍事パレードを行い、これを観閲した。また、同年8月7日には、中国海軍と空軍が、黄海及び渤海において、潜水艦を含む数十隻の艦艇、10機以上の航空機による大規模な軍事演習を行った。上陸作戦の訓練も行われ、習近平指導部が進める統合運用能力の向上を誇示したと報じられている。


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