2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月15日

 米国のNAFTA離脱の件については、既に議論が重ねられていることですが、合理的に考えれば、離脱は米国の利益とならないであろうとのこの記事の指摘は正しいです。

 カナダについては、NAFTAから米国が離脱した場合、これに先立ち締結されている米加自由貿易協定が再適用されるのか、米国はこれも廃棄するのかという問題も出てくることになります。

 報道によれば、米国は、自動車の原産地規則については北米コンテントを85%、そのうち50%を米国原産とするとのハードな要求を出しているようです。原則の問題として、米国にだけこのような特別待遇を認めることは難しいでしょう。また、メキシコに進出している自動車企業の米国向け自動車の部品の40%は既に米国製部品です。したがって、さらに10%米国産比率を高めることや、また、北米コンテントを現在の62.5から85%に引き上げることは、その分、割安のアジア製部品から割高の米国産部品に切り替えることになるので、これらによるコスト上昇の影響が、WTO関税の2.5%を適用した場合の影響を上回ることになり得ます。その場合、NAFTAの適用を受けないで米国に輸出するか、タイや中国からの輸出に切り替えた方が競争力を持ちかねません。

 メキシコ政府は、トランプがブラフでNAFTA離脱を示唆すれば、メキシコ側はそれで譲歩するとは思えず、それが現実のものとなってしまう可能性は高いでしょう。他の問題についての交渉状況にもよりますが、ローカルコンテントの具体的数値は、協定に書き込まれるわけではないので、この問題が最後まで持ち越される可能性もあるでしょう。従って、進出企業にとっては、米国がNAFTA離脱しWTO関税の適用となった際の対応について真剣にシミュレーションを行うべき時期に来ているといえるのではないでしょうか。

  
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