しかし、ゲーム機であれば、そんな事は全く問題にならないだろう。なぜなら、ユーザーは3Dの映像が見たいのではなくて、面白いゲーム体験がしたいからだ。
実際、ニンテンドーDSi用のソフトで、アッタコレダというゲームがあって、これはゲームディスプレイの中に、小さな奥行きの世界を表現していて面白い。
DSiのディスプレイには、3D表示機能はない。しかし、自分撮り用のカメラで、ユーザーの顔(を含む背景)がどういう角度から画面をのぞき込んでいるかを判定して、それにあわせて表示を変えている。
これによって、画面を斜めからのぞき込むと、正面からは見えなかった物体の裏側が見えて、まるでゲーム機の窓の奥に空間があるように感じさせる。
つまり、ゲームならではのインタラクティブ性を使って、3Dのゲームを実現しているわけだ。
3Dテレビの場合も全く同じで、その画面サイズでなにができるかを意識して、それにふさわしいコンテンツを表現する装置と考えれば、可能性は広がっていくだろう。
早稲田大学助教の河合隆史さんは、今回の家庭用テレビなどのAV機器の発売を、予想より早い登場で少し驚いたという。「3Dブームの波及効果として、医療や設計をはじめとする専門分野での応用が促進されるとともに、家庭用に入る以前の中間的な利用場面として、例えばゲームセンターや学校などが、まず出てくるのではと考えていました」とのこと。
たしかに、そう考えると、家庭用テレビサイズの3Dディスプレイにも、様々な活用の可能性がある事は間違いない。
一口に3Dといっても、ディスプレイの大きさや、どの程度の距離で使うのかなどの特性によって、表現ができるものとできないものがある。
3D劇場映画は、そのことの理解が進んだ事が、今の成功の基礎にあって、この流れは今後も続いていくだろう。また、ゲーム機も、おそらくその点では、あまり苦労する事はないように思う。しかし、3Dテレビについては、世界のメーカーが取り組んでいるにしても、今後しばらくは紆余曲折が続くのではないだろうか。
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